神主のぶらり街歩き

連載第27回 尼崎城の名残をぶらり

「当社は尼崎城とご縁の深いお社で‥」と由緒を説明すると、「えっ、尼崎にお城があったのですか」と聞き返されることが多い。確かに元々尼崎城があった場所には天守閣など面影がほとんどないためご存知ない方も多いのだろう。

そこで、その名残を追い求めて歩いてみた。貴布禰神社北側から東へ徒歩5分。まずは11カ寺が軒を連ねる寺町を進む。ここは1617年(元和3年)に、尼崎藩主・戸田氏鉄が改築城を行った際、町場や領内に散在していた寺院を1カ所に集めたものだ。その寺町のほど近くには平成13年6月に尼崎信用金庫によって開設された尼信会館があり、2階の常設展示場では尼崎藩主・櫻井松平家ゆかりの重要文化財「太刀銘守家」や、尼崎城分間絵図などを見ることができる。

さらに東へ5分歩くと、櫻井神社が庄下川沿いに鎮座する。ここは尼崎藩主・櫻井信定公以降十六代忠興公までを御祭神としてお祀りする神社だ。ご社殿の屋根瓦にピンクに色付けされた桜の紋が描かれている。また神社の北側には尼崎市立中央図書館や尼崎城址公園があり、一部石垣が再現されている。

そして、そこから東へ5分、尼崎市立文化財収蔵庫が見えてくる。尼崎市立城内中学校(合併後は成良中)移転後の校舎を活用し平成21年に開館した。入り口を入って右へ進むと突き当りに尼崎城と城下町の展示ホールがあり、市制70周年の時に作成された城下町の巨大な模型が存在感をアピールする。他にも城内の屋敷で使われていた食器類が展示されているなど、尼崎藩主の生活ぶりを想像することも可能だ。

ここまで歩いてきて感じたことは、「すべてが点」ということ。やっぱり「線」が無ければせっかくの歴史遺産も活かすことができない。平成28年に迎える市制100周年へ向けて、点を線で結ぶ取り組みがなされることに期待したい。その時は尼崎藩の祈願所でもあった貴布禰神社をお忘れなく!
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江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」(FMあまがさき毎週水曜日夜8時~)も好評放送中。podcastも。