3時の働くあなた

尼崎南署中央交番

深夜3時の静まり返った中央交番で記念撮影。取材中でもわずか1時間で3件の通報があった。「人倒れ」「自動車事故」「酔っぱらいのトラブル」。とにかく忙しい現場なのだ。

午前2時。穏やかな雰囲気のなか、時折こぼれる笑い声とともに取材が進んでいく。とても静かで平和な時間だ。しかしこんな日は極めて珍しいのだという。

今回訪れた中央交番は、尼崎で最も忙しい交番である。データを参照すると平成24年の市内の刑法犯認知件数(被害届を受けた数)約3000件の内、同交番管内の件数は約600件と全体の5分の1を占めている。ちなみに内訳は歓楽街の駅前だけあって、自転車の盗難が最も多く、飲酒の上でのケンカなども目立つ。これらの事件や事故に地域第1?3課の計16人が3交替制で対応している。ベテランから新人までチームワークがモノを言う世界である。

勤務は午前9時?翌日9時までの24時間。南署での朝礼で1日の流れを確認した後、交番へ就勤となる。警ら、交番での警戒活動、一般道での立番、巡回連絡が1時間毎に割り振られている。最近では立番勤務での声かけ活動や徒歩警らの実施など市民とのコミュニケーションに力を入れている。また中央交番はレディースサポート交番として、女性警察官が配置。歓楽街という場所柄から女性の相談が多く、話しやすいように配慮されているのだ。

しかし、当然ながら通報が入ればスケジュールは変わる。昼間は道案内、遺失物や拾得物の届け出、夜は酔っ払いがひっきりなしに訪れるため、仮眠はおろか食事の時間も満足にとれないほど忙しい。ストイックな職場なのだ。

一般的な市民であれば、事件や事故に見舞われることは多くても一生のうちに数回だろう。それを1日に何回も目の当たりにする仕事は身体のみならず、精神的にも辛くはないのだろうか?

「このエリアには歓楽街だけでなく工場や住宅地などいろんな要素があります。住んでおられる方々も様々。交番が忙しいのは、まちに活気がある証拠。市民の安全を守るためには、憎まれ役になることもあるけど、感謝される喜びもあります。やりがいがある仕事ですよ」と中央ブロック長の岩瀬規彰さん(39)は語る。南優さん(28)もまた「交通から暮らしに関わることまで警察としての幅広い活動ができる」と交番勤務の魅力を語ってくれた。

頼もしい彼らのおかげで、私たちは平和に暮らすことができているのだなとあらためて思った。最後に「お酒は適度に楽しいお酒を」と南さん。説得力が違います。

この日のお夜食
「コンビニの幕の内」と「母の手作り弁当」

「夜食? 基本的には食べませんね」というお二人。夕食は空いた時間を見つけて10分くらいで済ますことがほとんど。ちなみにこの日の夕食は「コンビニの幕の内(岩瀬さん)」と「母の手作り弁当(南さん)」。


取材・文/ながいじゅんいち
神戸山手大学講師。専攻は社会学、文化社会学、メディア論など。あとロックフェス!