サイハッケン 尼崎でバナナが育っていた。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

駐車場の南側、歩道越しにも眺められるバナナの木たち。他にも果樹が何本も残されている。

在りし日の琴浦住宅敷地内の菜園の様子。土いじりの得意な人が多く、最後まで綺麗に管理されていた。

ぶっちぎりの輸入量で、日本の人気ナンバーワンフルーツと言えばバナナである。そのバナナが尼崎で植えられ、群生しているという噂を聞き、現場へと急行した。慌ててやって来たが、そういえばこれまでバナナの木なんて見たことがない…、と不安に思うもつかの間、ド素人の私でもあっさり発見できた。だって、葉っぱ1枚が裕に1メートルを超える大きさで、明らかに他の木とは違っていたから。

場所は尼崎競艇場の東、つい数年前まで昭和28年築の市営琴浦住宅があったところ。跡地には、スーパー銭湯が今春オープンしたが、南側の駐車場脇の植え込みに、バナナの木が生えていたのだった。

今回のネタ元は、尼崎市役所政策部長の山本敏史さん。当時、市営住宅の跡地活用を検討する中で、敷地に柿やミカン、キンカン、イチジク、花梨、さらにはバナナまで群生している様子に驚いたという。「自治会長さんに聞くと、住民が植えたもので樹木ごとに世話する人がいて、収穫後は”おすそわけ“し合ってたそうです」と山本さん。

この豊かな果樹園には、住民が手塩にかけて育てた歴史や思い出が詰まっている。建物の撤去と一緒に伐採するのは忍びないと、粋な計らいが行われた。跡地開発の業者を選ぶ際に「この樹木を残し周辺環境と調和すること」を条件に、募集したのだった。かくして、このバナナを含め、「実のなる木たち」が保存されたわけだ。せっかく残ったバナナの木に、果たして再び実はなるのだろうか。今後の動向を見守りたい。


取材と文/香山明子
目覚めの一杯のグリーンスムージーにバナナは必須。尼崎産バナナ食べてみたいなぁ。