神主のぶらり街歩き

連載第23回 シーサイドをぶらり

「最近、歩いていないんちゃいます?」「1回遠いところまで、ほんまに歩いてきはったら?」など、編集会議で厳しい声。そこで、今回は尼崎の海を見にぶらりしてきた。

神社を出発すると五合橋線を南下し、ひたすら尼崎の海を目指す。そういえば、かつて伊丹市と宝塚市の行政マンが「尼崎には海があることが羨ましい」なんて言っていたなあ、と思い出しつつ、44歳の今日まで、尼崎の海を意識して生きてこなかった自分がどう感じるのかを楽しみに工場の真ん中の道をひたすら歩いた。

尼ロック(尼崎閘門)を右手に見つつ、阪神高速湾岸線をくぐり、ひたすら南へ。だんだんとトラックの交通量も減ってきたが、ぶらりするにはとても息苦しい大気状態にもめげずさらに南下。そして、ようやく、大阪湾フェニックス計画尼崎沖埋立処分場、そして船出西埠頭の看板が見えたところで海辺に出ることなく行き止まり。「じぇ、じぇ」。つまり、尼崎市民は尼崎の南の端で海を見ることができないことを知ってしまった。

約1時間かけて到達した南の端だけに、海が見られず落胆していたが、少し引き返すと目に飛び込んできたのは、のびのびに伸びた草の向こうに「尼崎のびのび公園」の看板だ。わずかな望みを託して公園に入り小高い丘を上ると、西にようやく海が見えた。「海、見えたどう!」と叫んでしまった位、人っ子一人いない公園だったが、さらに、海辺に近づくことのできるスペースも発見することができた。尼崎のシーサイドだ。

しかし、穏やかな海を見ながら疑問に思った。「ここまでどうやって来るのか」と。歩くには空気が許さないし、昼間は1時間に1本しか走っていない市バスの停留所からも徒歩で10分かかる。さらに駐車スペースも全くないため、人が訪れるのを拒否しているかのような公園だ。

近年、尼崎運河や尼ロックは整備が進められ、これらを拠点に水辺を楽しむイベントも増えてきた。ただ、五合橋線の突き当りはそうではなく、高度経済成長を支えた”尼崎の海“のままだったのだ。

ちなみに帰り、歩き続けるにはあまりの排気ガスの多さにダメージを受けたため、1時間に1本の市バスに乗ったことをこの場をお借りしてお詫びしておきます。


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」(FMあまがさき毎週水曜日夜8時~)も好評放送中。podcastも。