サイハッケン 怪獣マニアが集う市場があった。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

この日はジェームズボンドの魅力を語り合う「007酒場」。森谷大店長(写真中央)の還暦のお誕生日を祝うサプライズも。

かつて「阪神間の台所」としてにぎわった三和市場が、近頃マニアが集う聖地として注目を集めている。「怪獣酒場」「ヒーロー酒場」などと題したバーイベントが毎月開かれ、会場の壁一面に映画ポスターを展示し、それを肴に一杯呑もうという趣向だ。スクリーン映像を絡めたトークも充実、少しの好奇心さえ持てばマニアでなくても楽しめる。

テーマは特撮の怪獣やヒーローものにとどまらない。SF、アクション、サスペンス、ハードボイルド、スポ根、怪談・ホラー…と幅広い。されどマニア向け、繰り広げられるトーク内容は実に深く、ストーリーの成立背景、時代背景、監督・俳優の人間関係などについて熱く語る。

次回の酒場情報はブログ「尼崎横丁だより」でご確認を。三和市場は阪神尼崎駅より中央商店街を西へ歩いて約15分。
尼崎横丁だより

イベントのきっかけは2年ほど前。三和市場で精肉店を営む「怪獣酒場」大店長こと森谷寿さんをはじめ、有志のポスターやフィギュアコレクションを並べて集まったことから。一時は客が少なくて「やめてしまおうか」と思ったこともあったが、昨年ぐらいから人が人を呼び、「次のテーマは私も話したい」と、ただの客だった人がプレーヤーになりだした。

映画のポスターを描いていた人、映画会社の人、怪獣博士、講談師、作家など、その道のプロが集まり、一風変わったコミュニティが生まれつつある。当初はまったく予想もしなかった嬉しい事態だ。

そんな中、昔は関西でも開かれていたが、今は関東のみの開催になっている怪獣やフィギュアのフェスティバルを復活させよう、と彼らは盛り上がる。三和市場を怪獣マニアの「メッカ」に、そんな熱い想いから、4月27日~28日に三和市場全体を「怪獣市場」と題して、さらに大きなイベントを開催した。「野菜みたいに市場で怪獣を売るっておもしろいでしょ」と森谷大店長は笑う。

この酒場は人の力をどんどん吸い取って大きくなる、まさに「怪獣」酒場なのだった。


取材と文/岡崎勝宏
1971年尼崎生まれ。工業デザインを志し、気がつけば建築の深みへ。アマ発の建築を考える。