嗚呼…おもひでの市バスグラフィティ

尼崎の市バス。毎日見かける身近な存在だが、その長い歴史を振り返ると、バスファンの間で今も絶大な人気を誇る車種が導入されていた。

もちろん、当時としてはそう珍しくない車両なのだが、後年になって、特徴的なデザインを持つ車種に限って、オバQ やカマボコといった愛称が付けられている。

個人的に思い出深いのは、クリーム地に小豆色の帯を巻いた旧塗装のカマボコだ。

昼のバスには、ちょうど子供の目線の高さに紺地に黄色の筆文字で「ひまわり」と書いたプレートが付いていて、その頃通っていた幼稚園のクラスが「ゆり組」だったから、とても不思議だった。そんなことを思いながら、母親に手を引かれて歩道のバス停からよいしょ、とバスに乗り込んだ小さい頃の事を思い出す。

いすゞBX

昭和30年代のボンネットバス定番の「いすゞBX」。尼崎市にも数多く導入されていたが、写真の車は中でも全長が短いタイプ。この頃は女性の車掌さんが乗っていた。(昭和35年)

オバQ

1970年導入の貸切車「いすゞBU15EP」。愛称は“むこがわ”。競艇・競馬の送迎ではなく一般観光用で、丸い車体とクチビルっぽい顔つきは通称「オバQ」と呼ばれる。この型は今でもミニカーで新製品が出るほどの人気車種。

カマボコ

1971年に導入された「ふそうMR410」。特徴のある屋根の形からファンの間では「カマボコ」の名で愛されている。クリームと小豆のおりなす和スイーツ風な旧塗装は1971年から1986年の間の新車に採用された。

写真提供=尼崎市立地域研究史料館


井上 衛
1973 年生まれ。尼崎在住。はたらく自動車図鑑と共に大きくになってしまった困った大人。