ビバ!銭湯

市内に56軒。尼崎南部は日本トップクラスの銭湯密集地帯だった。普段使いの近所の風呂から、自転車に乗ってでも通いたいスゴい風呂など、そこらじゅうに銭湯がある街の楽しみ方をご提案します。

フロ屋のプロ 蓬莱湯の主人 稲雅雄さん(左)「毎日やったらすぐ慣れるよ」
フロ屋に入門 本誌特派員 齊藤成人(右)「これはかなり大変ですね」普段キーボードより重たいものを持たないので、今回の風呂掃除は大変でした。掃除開始10分でパンツ一丁になっています。

本誌特派員 齊藤成人

銭湯が好きだ。足が伸ばせるきれいなお風呂を数百円で楽しめるなんてなんて贅沢なのだろう。一度行くと翌日も続けて行きたくなる不思議な中毒性がある。でも、巨大なスーパー銭湯が増える中、法律的には一般公衆浴場と分類されるいわゆる銭湯は、この30年で3分の1にまで数が減少している。このペースだと、2025年には日本中で銭湯がゼロになる。動物であれば絶滅危惧種認定レベルだ。今回は、そんな絶滅危惧種?である尼崎センタープール前近くの「蓬莱湯」を訪問し、一日お仕事体験をしてみた。


はじめての女湯掃除 無駄に緊張する特派員

12時開店の日曜日、開店準備は朝9時前から始めないといけない。まずは風呂場の掃除から。これがなかなか大変な作業で、浴槽をきれいにするため、ひたすらゴシゴシとブラシで擦る作業が続く。「腰をやられないようにね」と奥さんの稲里美さんに温かい言葉をかけてもらいつつ、ひたすら磨くこと30分。ようやく浴槽がピカピカになる。この開店前の掃除も大変だが、閉店後はさらに洗い場の床を1時間以上かけて掃除するというのだから、銭湯の仕事=掃除といっても良いだろう。やはり、銭湯は掃除よりも入るに限る。

高温の釜にひるむ特派員

並行して風呂の水を沸かすための釜場へ。 開店時間にちょうど良い湯加減にするには2時間前には釜に火を入れなければならない。営業時間中は、30分に1度は様子をみるそう。銭湯経営において一番お金がかかるのがお湯を沸かすための燃料費というイメージがあったが、これは間違いで、よそからもらってきた廃材を自分で切って薪にして燃やすため、思ったより費用はかからないらしい。温泉が湧き出す蓬莱湯にとってはむしろ、空調やドライヤーなどの電気代の負担が大きいとのこと。「だからうちの店は太陽光発電つけて工夫してるで」と稲さん。

実は銭湯の入浴料はスーパー銭湯などと違い、物価統制令で上限が決まっている。蓬莱湯は温泉がついているから大人800円ね、などと勝手に決められない。ここ兵庫県では、入浴料は上限大人410円と決まっている。このため、経営を成立させるには、蓬莱湯の太陽光発電のように、コスト削減の工夫が大切になる。銭湯経営もなかなか大変である。

ぎこちない挨拶に常連さんも苦笑

洗い場がピカピカになり、浴槽にお湯が張られるとほぼ準備完了。あとはイスをきれいに並べれば終了とばかりサイダーに手を伸ばすが、「お客様に気持ちよく入ってもらうために、トイレに花を飾ってや~」と怒られる。本当に細かい気遣いをしているのだと実感。そんなこんなで12時の開店時間に。後は閉店まで番台にひたすら座り続けることになるのだが、「たまに座ったまま寝てまうな(笑)」と稲さんが笑う。

入口にのれんをかけると、開店前から数人のお客さんが並んで待ってくれていた。高齢者が多い。最近は、家に風呂があっても掃除が大変だからあえて銭湯を利用する高齢者の利用が増えているそうだ。これから日本は高齢化社会を迎えることになり、銭湯を利用したいと感じる人が増えてくるだろう。その時に肝心の銭湯が無くなってしまわないように、また銭湯を利用しようと思うのであった。

蓬莱湯の一日

ご夫婦と子どもたち、それにパートさんで営むお風呂屋さんの一日をみてみよう。

営業中も脱衣所やトイレに細やかな心配りが必要なのである。


おジャマしたのは…
蓬莱湯(ほうらいゆ)

道意町2-21-2 TEL:06-6411-0567 15:00~23:30(日曜は12:00~)金休

地下700mから湧き出す温泉を使い、温泉自動販売機やペットシャワーなど斬新な発想で注目を集める新感覚銭湯。