神主のぶらり街歩き

連載第18回 祭りの幟(のぼり)を見ながらぶらり

前号、突然にお休みをいただきましたところ、「連載は終了したの?」「一番楽しみにしていたのに…」との有難いお言葉を頂戴しました。ありがとうございました。

さて、季節の良くなった十月に街を歩くと、「○▲神社御祭礼」とか「◎□神社秋祭」などと書かれた幟(のぼり)を目にする機会が増えませんか。私も難波八幡神社や西長洲八幡神社、西に行くと松原神社など“ぶらり”の最中に多く目にしました。「大売り出し」「現地商談中」といったものと違って、お祭りの幟は街にとけ込んでいるのが神主として嬉しいですね。

市内には六十六の神社がありますが、その多くが秋祭りを行っています。「収穫に感謝を申し上げる」という意味合いのある秋祭り。尼崎と言えば工業の町というイメージばかりが先行していますが、秋祭りが多いということは、その昔町々に多くの田畑があったことがうかがえます。ちなみに周辺に田畑のない当社は、典型的な都市型の神社。疫病退散を願う夏祭りはありますが、秋祭りは行われていません。

ところで、東日本大震災の被災地でも夏頃から人々が集う祭りが復活してきました。家は津波で流されていても、毎年守ってきた祭りだけは、という心意気なのでしょうか。当社も阪神淡路大震災の直後は、神社側が夏祭りを実施するかどうか未定の段階で、地域が動き始めていました。

今回の震災では多くの神社が避難所として機能したと聞きます。これは神社というスペースが信仰の場であるよりも、地域のコミュニティー形成の場であることが大きかったのではないかと推察されます。いつも祭りで顔を合わせていた人達が困ったときに助け合う環境を、知らず知らずに神社という場で整えていたのでしょう。

都心部でも年々祭りは盛んになってきています。神輿やだんじりが復活したり、境内で催しが行われたり…。地域の人達の関係性を見直す抜群のツールとして活用されているようです。

“ぶらり”の最中に幟を見ただけでここまで考えてしまうのもいかがなものか、ですが、皆さんも地域の神社の祭りに積極的に関わって下さいね。六十六社の宮司を代表しお願い申し上げます(誰にも頼まれていませんが…)。


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」(FMあまがさき毎週水曜日夜8時~)も好評放送中。podcastも。