続・ツクラナイマチヅクリ 国道43号線を地下に埋めてみると…

新たに施設を作らずに地域の資源を上手く使ったまちづくりを紹介

2012年に阪急神戸店が閉店することが発表された。その事についてある地元の人が「距離的には近いけれど、阪急神戸店の手前にある国道を渡らなきゃいけないから、なんとなく足が遠のいたんだよね」と言っていた。

なるほど、そういう心理もあるのだと思い、ふと尼崎をみると、同じように国道43号線という大きな幹線道路が市内を横断しており、街を南北に分断している。もしかしたら、43号線以南の工場を見に行きたくてたまらないけれど、43号線を渡るのが億劫で見に行くのをためらう工場好きがいるかもしれない。

中心部を貫くハイウェイが地下へと潜り、地上は大規模な緑地帯に変身

実は、街を分断する道路を無くすための有名な開発プロジェクトが存在する。アメリカ史上最大の予算額が投じられた公共事業である、アメリカ・ボストン市の「TheBigDig(巨大掘削)」プロジェクトだ。ボストン市中心部を縦断するハイウェイ12.5kmを地下化し、空いたスペースの75%を緑地化する、という壮大なスケールの工事で、1991年に始まり、220億ドル(1兆7000億円以上、1ドル=80円換算)もの巨額資金が投入され、2006年にようやく完成している。これにより、高速道路が地下化され、その上にできた1.2km2の土地が公園へと変身し、道路によって分断された街が一体となった。

尼崎市でも、43号線を地下化してみると、どのくらい費用がかかるのだろう。

一般に地下化工事は大変な費用がかかるもので、例えば、2006年に発表された「日本橋プロジェクト」の試算では、日本橋の上に架かる首都高の地下化工事の地下トンネル部分の工事費は1kmあたり465~571億円と試算されている。同じく工事費をみてみると、東京湾アクアラインが1kmあたり約950億円(地上部分含む)、地下鉄都営大江戸線が1kmあたり約340億円、東京外環自動車道(世田谷~練馬間)の地下化工事が1kmあたり約800億円、である。

仮に1kmあたりの工事費を500億円と仮定すれば、尼崎市内を走る43号線・約4kmの地下化工事は約2000億円。これは5月に開業した大阪ステーションシティとほぼ同じである。

もちろん、尼崎市を走る43号線が全て地下化されても、南には工業地帯が広がっているので、果たして街が一体化する、というような効果が得られるかどうかははなはだ疑問である。ただ地下化された道路の上には4km×75m(0.3km2)の緑地ができあがるし、自動車の排ガスも少なくなるのは確実ではあろう。

高いとみるか、安いとみるか。

TheBigDigプロジェクトは、あまりの巨大な財政負担であったため、議会のみならず、住民の間でも相当な議論が起こった。工事費の借金を州政府が返済し終わるのはなんと40年後である。


文・齊藤成人
金融機関勤務。「試算だけならタダですから」という齊藤さんに尼崎で作ってみてもらいたい事業を募集中。