シマッチュヌ尼

尼崎で暮らす奄美出身者は4万人を超える。
鹿児島でも沖縄でもない“奄”美のひとびとが、大阪でも神戸でもない街“尼”崎で見つけたシマッチュの心に迫る。

演劇ミーツ尼の奄美民謡

劇中で演奏した「ワイド節」は闘牛の唄。劇団の女優さんも交じえ、楽屋でにぎやかに練習。

ウーレ、ウレウレ、吾きゃ牛ワイド、全島一ワイド…。陽気にはやし立てる唄と力強い三味線の響きが島の風を運んでくる。尼崎に暮らす奄美の人模様を描き、6月に上演されたピッコロ劇団の『あまに唄えば』の一場面。舞台に上がった「尼崎奄美民謡愛好会」の6人は皆、20歳前後で故郷を離れ、40~50年になる。「島を忘れんために」と週1回、大物の公民館に集まっているのを劇団の人が知り、出演と唄や方言の指導を依頼された。

奄美の島々には唄があふれている。そこで育った人の耳の奥、いや身体の芯にはその響きが深く刻まれ、ある時ふと蘇る。

愛好会を指導する勇富夫さん(74・写真左から2人目)もそうだった。奄美大島瀬戸内町の出身。尼崎では鉄鋼会社や市の施設で働いた。「仕事の行き帰り、家々から三味線がよう聞こえましてね。30代半ばのある日、その音色が無性に懐かしく思えてきて…」。蛇皮の代わりにセメント袋の紙を張った三味線で練習し始めた、という。

勇さんと同郷の久保勝洋さん(62・写真左端)は会社を定年退職した2年前から会に通う。「民謡を習いながら、その背景にある奄美の歴史や文化を調べてるんです」。

シマ唄と出会い、あらためて気づく故郷の美しさ、豊かさ、温かさ。遠く離れているからこその思いが舞台にあふれていた。

尼崎奄美民謡愛好会

NHK朝の連ドラにも唄者役で出演した勇さんを指導役に、会員は16人。毎週木曜18時から大物で練習中。8月22日には、愛好会が所属する「関西奄美民謡芸能保存会」の発表会がアルカイックホールオクトで開かれる。

入館無料・予約不要●南城内10-2 tel:06-6489-9801