オレンジ色のにくいやつ 新車両1000系の世界

「明るくてええですねぇ」。試乗会に参加した尼崎育ちの桂米團治さんも白井市長も絶賛した新車両1000系の魅力にせまる。


「開通日は嬉しくて思わず乗りに行っちゃいました」と新車両への愛情をのぞかせる車両部の小松さん(中)。

世界最高レベルの加速力を誇るジェットカーをはじめ、質実剛健な車両を世に送り出してきた「技術の阪神」。尼崎車庫にはその心臓部ともいうべき車両部がある。

近鉄との相互乗り入れに向けて、始動した1000系プロジェクト。「開業100周年を迎え、さらに次の100年へ一からのスタート」という阪神の決意を車番に込めた。07年10月にすでにデビューしていたが、なんば線開通で注目を集める。ステンレスの車体に鮮やかなビバーチェオレンジが映えるカラーリング。「環境への配慮から塗装面を極力減らしました。レーザー溶接で仕上げたので、溶接跡が目立ちません」と車両部の小松克祥さんも胸を張る。コンセプトは「ヨソイキモード」。難波や奈良へ向かう「よそ行き感」を、洗練されたデザインで表現した。

見た目だけではない。「万が一、一部の動力が故障しても生駒を越えられるような走行性能を確保しています(小松さん)」とパワーもすごいのだ。九条・西九条間の急こう配も楽々。

さらに、近鉄との乗り入れ対応にも技術が光る。「無線の周波数やATS(自動列車停止装置)、ベルの音まで、これ一つで近鉄仕様に切り替わります」と見せてくれた線区切替スイッチ。運転手の交替をスムーズにするための工夫である。

と、ここまでは少しマニアックな1000系の魅力だが、乗客にとって嬉しい点も満載。例えば車内の明るさ。「ビジネス利用のお客様が多いので照度にこだわりました」と、座席の背もたれを低く設計し、その分窓を大きく取った。オリーブグリーンのシートも明るさを演出、座り心地も悪くない。全車両に車いすスペースを設置し、耳の不自由な人向けにドアに開閉を知らせるランプをつけ、連結部から転落しない工夫や扉窓に水滴がつかないよう複層ガラスを…など細部に見られるやさしさは、乗って体感するべし。

マニアの目線を教えてもらいました。

HOBBISTAだいおらま大阪店 菅原信也さん

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新線はここを見るべし

西大阪線から西九条を抜けると、そこには真新しい線路が待っている。なんば線の見どころは、ぜひとも乗って体感してもらいたい。

其の一 防音壁に驚くべし

西九条駅を過ぎて、まず驚くのは線路をすっぽりと覆うセミシェルター。周辺の住宅地に配慮し防音対策として取りつけられた壁の効果は「リニアが通過したような静かさ」だとか。地下駅の九条へと一気に潜る急こう配も見もの。

其の二 駅のおシャレさにため息をつくべし

車輪をモチーフにしたタイルがはめ込まれた九条、煉瓦積みのドーム前(写真)、アルミとタイルでレトロな桜川。新駅はそれぞれ地元にちなんだテーマでデザインされている。「えらいおシャレになったなあ」と途中下車して見るもよし。

其の三 近鉄車両を歓迎するべし

普段は見慣れない電車がやってくるのは、“撮り鉄”のみなさんだけでなく、一般人にとっても新鮮なもの。望遠レンズで追うのもいいが、奈良方面からやって来た近鉄車両には、ぜひとも歓迎ムードで手を振ってみたいものである。