SOUTH TO SOUTH 大阪ミナミから 尼崎南部へ

2009年3月阪神なんば線が開通した。構想から60年、悲願のプロジェクトは、阪神尼崎駅と大阪難波駅を結び、さらに奈良へもつながる。尼崎南部の背骨、阪神電車の新線で街はどう変わるのか。

新線効果 湧く尼崎

大阪、神戸、奈良…各地で記念行事がひらかれた3月20日。ここ尼崎でも、地元の歴史や名物、わが街のオモロさをアピールしようと、駅前では“ならでは”のイベントが開催された。お城があらわれ、トラのおばちゃんが乱舞し、アマレンジャーがガイドブックを配った1日を追った。

駅前に一夜城が出現

完成した尼崎城を見上げる美術部員たち。「築城400年のときに完成する尼崎城も絶対見に来たい」と県立尼崎高校2年の迫田美央さん。

新線開通の日、阪神尼崎駅の南に「一夜城」があらわれた。尼崎城址公園にある白壁の上に、市内の高校生らが描いた天守閣のパネル画がお目見え。地元の歴史好きで作るグループ「城内のまちづくりを考える会」(真柄容子代表・52)が、電車の乗客に尼崎が城下町だったことをアピールしようと企画した。

江戸時代には、4層からなる天守閣が建っていた城内地区。これまでも様々な団体から尼崎城復活計画が起こってきたが、資金が集まらず難航し実現にはいたっていない。「本物は無理でもパネル画なら」と真柄代表は県立尼崎高へ協力を依頼し、美術部顧問の松岡昭彦教諭(46)がこれに賛同。同校に加えて尼崎小田、尼崎稲園、尼崎西、市立尼崎の5校の美術部員25人が巨大な城を描いた。

制作日数は10日間。「資料を調べリアルな再現を目指しました」という松岡教諭の下絵をもとに、生徒がアクリル絵具で色をつけ、タテ180センチ、ヨコ90センチのパネル14枚を完成させた。

開通前日には、同会メンバーでもある地元工務店の協力で、高さ4メートルの足場を設置。1週間だけの「幻の城」が再現された。製作には約60万円がかかったが、個人や団体から寄付を募った。「今回は上の2層だけでしたが、尼崎築城400年にあたる2018年にはすべてを完成させたい」と真柄さんは次の目標とともに、引き続き寄付を呼びかけている。

ゆるキャラ集合 せんとくんも来尼

駅コンコースでは、尼センが開業イベントを開催した。新線でつながる奈良から平城遷都記念事業のマスコット「せんとくん」が駆けつけ、トラッキーらと握手を交わし、友好を誓い合った。話題のゆるキャラを一目見ようと、多くの観客が集まるなか、過密スケジュールのせんとくんは、足早に次の会場である西宮へと去って行った。尼セン事務局の徳見忠浩(41)さんは「たった30分でしたが人気は絶大。また来てもらいたい」と話した。