アルカイック伝説

美空ひばり、セリーヌ・ディオン、忌野清志郎、チャゲ&飛鳥、アルフィー、ダイアナ・ロス、藤山寛美らもステージに立った、尼崎が誇る音楽ホールで聞いたすごい話。

日本屈指の音響は朝比奈プロデュース(世界のオザワも大絶賛)

天井にはついた56枚の扉で音響を調整

ホール全体を包み込む残響音のレベルは国内随一。「音響家が選ぶ優良ホール100選」に名を連ね、かつてオペラの公演で毎年アルカイックホールの指揮台に立った小澤征爾も絶賛する。それもそのはず、建築音響は、大阪フィルハーモニー交響楽団を率いた巨匠・朝比奈隆が工事現場にまで足を運び指導した熱の入りようである。

煉瓦積みの壁、残響を調整する天井開閉装置などこだわりは随所に光る。スタッフの知識や経験も豊富で、大阪ドーム公演前のダイアナ・ロスや、世界的テノール歌手であるカレーラスとドミンゴがリハーサルにわざわざ尼崎へ来た、といえばその凄さは推して知るべし。

白髪一雄(しらがかずお)が描いた迫力の緞帳(どんちょう)がある。

観客席にせまってくる緞帳は必見

観客席に向かうと真っ先に緞帳の迫力に息を呑む。尼崎出身の画家・白髪一雄が描いた『祝いの舞』と題する作品が幅20メートル、高さ10メートルにわたる綴れ織である。。色鮮やかな舞扇が乱舞する模様は、綱にぶら下がって足で絵具を広げる独特の技法で描かれた。前衛芸術集団「具体」を支えた世界的アーティストは今年4月に亡くなったが、彼の作品は今も観客を見守っている。

ブレイク寸前のコブクロも緊張?

「全国ブレイク寸前の人たちの公演が当ホールの特徴です」という支配人の梅津千草さん。人気フォークデュオ・コブクロも2002年、初の大阪城ホール公演直前に、ここでアンプラグドライブを敢行。「二人ともすごく緊張してましたよ」と梅津さんが当時を振り返る。

メタル、技巧派 渋好みの外タレ勢

『エイジア ライブインヒョウゴ1990.09.24』

「初の外国人公演はアルカトラスでギターはスティーブヴァイ。あとはジューダスプリーストに、エイジア…」と当時の担当・上坂直樹さんが通好みの名前を挙げる。いずれのバンドも熱狂的人気を誇り、尼崎での名演はブートレッグCDにも。

本人は出演せず… 岡八、幻の40周年

幻の公演記念てぬぐい

「クッサ~」「エゲツな~」の決め台詞でお馴染みの尼崎が生んだ喜劇王・岡八郎。1996年には彼の芸能生活40周年を祝う公演が企画された。しかし当の本人は前夜に自宅で転び入院。予定されていた2日間の舞台は吉本新喜劇の仲間や弟子たちが代役を務めた。主役不在、幻の公演は今や伝説に。

オザキもご予約してたのに…

夭折のカリスマシンガー・尾崎豊が尼崎のステージに立った…かもしれない、という情報も。彼が亡くなる直前にホールを予約していたとか。何とも惜しい話である。