THE 技 怪獣ファン唸らすリアリティ

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

メタリノームをご存じだろうか?懐かしの特撮『キャプテンウルトラ』に登場する、知る人ぞ知る怪獣だ。今回の技の持ち主は、こうしたマニア垂涎の怪獣ガレージキットを作り出す造形師、南田哲郎さん。年2回東京で開催されるイベント「ワンダーフェスティバル」に向けて出展準備中の工房を訪ねた。

イーグルcraft
昭和南通8-223-2
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日本のフィギュア史は80年代『ゴジラ』のリアルフィギュアに端を発し、90年代からは『セーラームーン』『エヴァンゲリオン』人気で美少女系フィギュアが業界を席巻する。「今や市場の8割が美少女モノ。怪獣は絶滅寸前ですよ。それでも根強いファンの期待に応えたい」と南田さんは意気込む。

チロチルス、ゴースラー、ナマコルゲ…製作するのは大手が作らないような通好みの怪獣たち。これまで誰もフィギュア化していないため、放送された映像や雑誌の写真などから、ウロコの1枚1枚まで丁寧に確認する。「ゴジラのファンはゴジラに新しいポーズを求め、ウルトラマンのファンはTVに忠実な再現を求める」とファン心理を分析する。「『ようこんなん作りよったなあ』と言われたくて」と資料の収集に余念がない。

見どころは、太もものしわ。中に役者が入っている細かな描写を表現した。「『ここまでやるか』とファンが唸る姿が目に浮かぶから、繊細な作業にも打ち込めるんですわ」と笑う。

そもそも架空の存在である怪獣のリアリティを追い求める。ファンそれぞれの記憶を形にする技に出会った。


okamammoth
1971年尼崎生まれ。工業デザインを志し、気がつけば建築の深みへ、アマ発の建築を考える。