尼の必見仕事人

尼崎ではたらく仕事人たちに3つの質問をしてみました。

①仕事を選んだきっかけは? ②辞めたいと思ったことは? ③夢や目標は何ですか?

製造技能士 製品が生まれる瞬間にひかれて

笹沼靖央さん(40)特発三協製作所勤務
①当社に勤めていた義母の紹介 ②難しい作業で納期に間に合わないと思ったとき ③かつて調理師を目指したことも。いつか自分の店が持ちたいんです。

縁あって薄板バネの製造メーカーに入社。金型をはめた機械で帯状の鋼材を型抜きし、成型するものづくりの現場だ。手業の魅力に触れ、深く携わりたいとすぐに思えた。技術は先輩技能士の仕事を見て覚えてきた。「はじめはぼーっと立っていることしかできなくて辛かったですよ」。入社から11年。「材料ごとの微調整が難しい。理屈から教えると混乱するので、経験を積んで勘を培って欲しい」と今では現場のリーダーとして後進の指導にあたる。「自分で改造した金型から製品が生まれる楽しさを実感して欲しい」と職人魂を語る。

調香師 香り生み出すプロフェッショナル

笠原真弓さん(27)高田香料勤務
①大学の就職課で見つけて ②ありません。向いているかは分かりませんが… ③頭の中だけで調合できるようになる

大学では薬学を学んだ。絵を描くのは趣味だった。偶然見た会社案内に「香りを作るのは絵の具を重ねるよう」と表現された「調香師」に魅力を感じ入社した。現在、調香研究課は20~30代を中心に10名。「食べることが好きな人が多い」という。本物の香りに親しむため「みんなで旬の美味しいフルーツを食べたりもしますよ」。

3000種以上もの原料の組み合わせから作りだす調香作業。日々面白さと難しさを実感しながらも、「いつか『天職』と言えるようになりたい」と微笑む。

ホテルマン 目指すのは「泊まりたくなる尼崎」

小森一慶さん(29)ホテル京萬
①両親を助け、ホテルを通して尼崎を伝えたいと思って ②ない。休日もほとんどないですけど… ③尼崎を語れるホテルになること

1993年、中学生のときだった。父親が突然脱サラし、阪神尼崎駅前に地下1階、地上9階建てのデザイナーズホテルを建てた。東京での大学時代、周りの友人との話から尼崎の知名度の低さを実感。開業以来、両親だけでやっているのも気がかりだった。「尼崎の良さをもっと伝えたい」と、25歳で尼崎に戻った。

子どもの頃から歴史好きで「宿泊客にも案内できるように」と、少ない休日にも史跡巡りの散歩をする。家族経営だからこそのアットホームな雰囲気を大切にしながらも、「尼崎を全国区に」と頼もしい。

青果店 お客さんのツボを探るオモシロさ

西田雅哉さん(30)マルト商店
①高校にはほとんど通わずに家業を手伝って ②何回もありますよ ③周辺の居酒屋全部にうちの野菜を届けたい

「実家が八百屋っていうとジャイアンみたいで嫌やったんです」と子どもの頃を振り返るも、「3才からキュウリを袋詰めしていた」と英才教育を受けて育った青果店の3代目。高校時代に家業を手伝ううちに商売の面白さにのめり込んだ。

「値付けはもちろん、チラシや陳列で売れゆきが何十倍も変わる。当たった時はそら気持ちええですよ」。細かいデータをにらみながら、次の作戦を立てる。「商売はバクチじゃなく必ず原因があって結果があると思う。お客さんのツボを探るのは難しいけど嫌いじゃないですね」と不敵に笑う。

看護士 お年寄り支える子育てナース

伊庭あゆ美さん(39)野村医院勤務
①女性も資格を持って働き続けたいと思って ②育児との両立を悩んだ事も… ③地域の人が安心して暮らしていけること

小学4年生を筆頭に3人の子育てをしながら、訪問看護の施設長として働く。おもに一人暮らしの患者さん宅を訪ね、健康チェックや相談に乗る仕事だ。「小さいころ祖母と一緒に暮らしていた影響もあるかも」と、患者さんの昔話に耳を傾けるのが好きだという。ゆっくり話をしながら患者さんの暮らしぶりから必要なケアを考える。「病気も生活の一部。うまく付き合いながら気持ちよく過ごせることが健康な暮らし」と、感じるようになった。伊庭さんらのケアがお年寄りの自立生活を支えている。

保育士 保育所の素敵な思い出作りたい

立石由起江さん(35)七松保育所勤務
①自分も保育所育ちで、保育所に楽しい思い出がたくさんあるから ②ない ③尼崎市を子育てのしやすいマチにすること

「両親が共働きだったので、物心ついた時から保育所通いでした」という保育士16年目の立石さん。仕事のやりがいは、子どもの成長を見る喜びはもちろんだが、その親との関わりが醍醐味だという。子育てを通じた深い交流はいわば同志のようなもの。

大変なのは、小さい子には「ちょっと待って」が成り立たないところ。ケガや安全面には特段に気を遣う。「子どもに楽しんでもらうために、まず自分が楽しんでいます」。奥が深く悩みも多いが、年を経るほど面白みは増してきた。「10年目くらいからが面白くなってくるとみんな言っていますよ」。