フード風土 23軒目 コンドウ珈琲店

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

午後への活力 町の喫茶店ランチ

700円でこのボリューム。「ちょっとご飯少なめにして」というお客さんも多いのだとか。
※11月のイーストランチはアジフライとカキフライに豚汁が付く冬仕様に

「カフェごはん」ではユルすぎる、「シェフの日替わり」では凝りすぎる。味もボリュームも値段も、すべてにおいて納得のハズさない昼メシといえば「喫茶店のサービスランチ」。これ、ワイシャツ族や作業着姿の「働くおじさん」たちの定説ではなかろうか。多彩なメニューをいちおう目でさらうものの、いざ注文となると「サービスでええわ」「わしも」。この潔さも心地よい。

杭瀬栄町EAST商店街には[コンドウ珈琲店]の「イーストランチ」がある。商店街の名を冠した700円の月替わりメニューは、昨年6月に始まった。「商店街の瓦版『イーストの紙』との連動企画で、お得な地元ランチをつくろうと始めたんですわ。最初は期間限定という話やってんけど、なんややめられへんようになって…意地みたいなもんやね」と店主の近藤保さん(52)。

工事のおじさんたちも大満足の「唐揚げ5個としょうが焼き」や「ビフカツ」、奥さんのひろみさん(48)が近藤家の食卓に出す味をベースにした「ロールキャベツ」、好評につきリピート率も高い「キノコソースのハンバーグ」。「月末になったら、来月のメニューは何にしよかと頭痛いですわ」と苦笑する近藤さんだが、そこは、母の代から40年あまり愛されてきた町の喫茶店のプライドとサービス精神。通常の定食類(650円)を50円上回るだけで「え、こんなに…」と、常連客に言わしめるぜいたく昼ごはんを味わわせてくれる。

取材に訪れた10月のメニューは、先述した一番人気のハンバーグだった。鉄板皿の上、ジュウジュウという音とともに脂をたぎらせる主役を、エノキとシメジたっぷりのソース、目玉焼き、アスパラが彩る。そんな本格グリル的料理でも、添えられるのはうどん屋のようなふた付き茶碗の白飯、味噌汁と漬物。この和洋折衷感覚が喫茶店ランチの王道であり、筆者のような「白飯食い」にはたまらなくうれしい。

ハンバーグ~ご飯~付け合わせの三角食べを黙々と繰り返し、ものの10分足らずで完食。そして満喫のため息。「午後もいっちょ働きますか」と気力もフル充てんされる喫茶店ランチは、尼崎を牽引してきた下町パワーの源なのである。 ■松本 創


23軒目 コンドウ珈琲店

杭瀬本町2-18-2 8:00~20:00
(ランチは11:00~14:00)月曜休
TEL:06-6488-4321