尼崎の”?”① いかにして立花の夜は面白くなりしか。

立花在住編集者・大迫力が語る

その街の顔というか性格を表すにあたり、「駅前」という言葉がまだ死語ではないのなら、立花の「駅前」は確実にその一つだろう。

現在の立花駅前にとっての大きなエポックと言えば、何を差し置いても「フェスタ立花」の完成だろう。平成12年、駅南側に誕生した交通ターミナルや店舗、タワーマンションなどを含んだこの工事は、もともとあった商店街の一部を吸収することもあり、着工時には昔の街並みを惜しむ声も少なくなかった。それでも、土地の権利を持っていた店主も多く、そのまま「フェスタ立花」に“入る”形になった店も少なくなかった。場所を移した店ももちろんあったが、近距離の移転に留まった場合も多かったようだ。

立花駅を降りると、南北を問わず、目に飛び込むのはパチンコ店やコンビニ、レンタルビデオ店など、どこにでもあるような顔ぶれだ。けれど、その間を埋めるようにこういった旧くからの店や商店街があることを、立花の面白さの第一としても良いだろう。ギンギンのネオンサインの隣で我関せずといった風情で営業する食堂やカラオケ立ち呑みなんて、見るたびに笑いがこみ上げてくる。

「フェスタ立花」の店舗を見ても、居酒屋の生ビール安売り合戦、夕方5時前で満員御礼の鉄板焼き店、大ボリュームの長崎ちゃんぽん、カウンター炭火焼ホルモン、「さんがい」(3階=3段重ね)が名物のお好み焼き屋など、仮にも駅直結ビルとは到底思えない高カロリーさだ。そう言えば、南北両方に商店街のある駅もそうはない。

たこ○
生ビール450円、持ち帰りのたこ焼きは9個350円~。●西立花町2-1-1 06-6419-5513 18:00~2:00(たこ焼き持ち帰り16:00~)

だとすると立花もまた南部的な、いわゆる「ベタ」な下町なのだろうか。そうではないというのが筆者の個人的な意見であるが、そのヒントは駅の南西側にある気がしている。駐輪場の出入口に近く、人通りが夜まで多いこの一角にはいろんな店が集まっている。印象的なのは客層が比較的若いこと。たとえば、バー的ノリがいい感じのたこ焼き居酒屋[たこ○]に集まるのは、学生や親と同居の20代前半独身組が中心。大学に在学中という店主おすすめのカクテルが連発されている。もちろんおっちゃんもいるのだが、この混じり合いこそが立花のキモではないか。

JRの駅前にありがちな“ハコもの感”の合間に下町風情が漂うけれど、ファミリー向けの新しい建て売り住宅が増えつつあるだけに、新しく住み始めた人も増えている。店にも新陳代謝が起こり、街全体に「動いている」印象を受けるから遊んでいて楽しい。

ちょうどいい湯加減のベタさを感じられる小ぎれいな下町。尼崎の美味しいところが一挙両得の立花駅前は、確実に今、ノっている。


大迫 力(おおさこ ちから)
編集者&ライター集団「140B」に所属。出屋敷生まれだが、現在は立花の建て売り住宅に在住。他の街を訪れるにつけ、アマの異質さを実感する。