神主のぶらり街歩き 連載第3回 街の空き地が気になる

健康のため、ウォーキングを始めた。でもただ歩くだけでは面白くない。そこで、神主の目でまちを観察することにした。

さすがに1月はぶらり歩きが難しい。突然にご祈祷を希望される方がお越しになるからだ。「神社といえばいつでも神主がいる」と思われている方も多いのだろう。しかし地域に密着した神社は大概、神主1人とその家族で留守番をしているため、神主の不在時間が多い。できればご祈祷を希望される場合、どこの神社でも前もって連絡を取られることをお薦めしたい。

さて、街歩きをしていると、どうしても「空き地」が気になってしまう。例えば国道43号線沿いの家は、阪神淡路大震災後、どんどん緑地化されていることをご存じだろうか。騒音・公害問題により国が買い取っているからだ。当社の周辺も震災から10年以上が経過し、多くが緑地化された。戦前、尼崎で一番の繁華街だった街も、今では車と緑地が大半を占めてしまったわけだ。寂しいなあ。

またバブルが崩壊したことと、震災により、街のあちこちに空き地ができた。そしてその多くは駐車場になってしまった。その多さは月極駐車場代の値崩れが起こるほどだったそうだ。仕事柄、新たな建物を建築するための地鎮祭の奉仕があることを楽しみに空き地を眺めていたのだが、長い間依頼されることはなかった。

しかし、最近その空き地に家が建つようになってきた。大きなマンションやビルが建つ場所もある。そのための地鎮祭の依頼を受けることも多くなってきた。やはり、空き地や駐車場よりも、人が住み、人が行き来する方が神さんも嬉しいに決まっている。もちろん私もだが…。

この尼崎の南部が景気回復の波に乗り遅れることなく、ものづくりの街として再生し、多くの人が住むかつての尼崎に戻ることを期待したい。ついでに地鎮祭に忙しく、歩かなくても痩せられたらもっと素敵なんですが…。そんな甘くはないですね。


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンな南部のお社きふねさん(貴布禰神社)第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。