この尼崎本がすごい!30冊 エッセイ・FOOD

無人島にも持っていきたい尼崎を感じる本30冊を選んだ。小説、エッセイ、地域本、ジャンルは様々、レビュアーも色々。ベスト30一挙紹介。

エッセイ

エッセイには人生がにじむ。尼崎で育った才能たちの回想も、ほんのひととき街と関わった記録も。多くの人が活字の足跡を残しているのだ。


天才の少年時代を垣間見る。『「松本」の「遺書」』

松本人志/朝日新聞社/潮小学校が生んだ天才・松ちゃんのエッセイ2冊をまとめたもの。お笑いやテレビ業界に対する批判の道行きに、小中学校時代のエピソードが顔を出す。「浜田と外人のパンツ盗みに行った」などの話は、具体的な地名こそ出ないものの、尼崎でのことと思うと嬉しい。(CO)


異能の人の幼少期 立花駅前日記『ロバに耳打ち』

中島らも/双葉社/母親の乳を吸った生後3カ月の記憶があるとか、父親が庭に突然穴を掘りプールを作ってしまったとか。立花で過ごした幼き日々を両親の想い出に重ねて綴るエッセイが15編。駅前の「喫茶おばちゃん」も、エッチな映画を見た「尼崎OS」もさらりとスケッチ。(MJ)


熱血野球人の青春 アマでもドラマが…『在日魂』

金村義明/講談社/宝塚に生まれ、報徳学園で甲子園制覇、近鉄などプロ3球団を渡り歩いた男の、酒と女と涙の野球一代記。尼崎話は小粒でもピリリ。熱血母ちゃんがホルモン買い出しに行く商店街、遊郭の馴染みだった中学の先輩、そして「在日」を理由に自ら別れを告げた初恋の相手は杭瀬の子。(MJ)


直木賞作家、関西のラスベガスへ。『草競馬流浪記』

山口瞳/新潮社/野球や将棋にも精通する直木賞作家が全国の公営競馬場を巡回。園田競馬場も堂々登場する。独特の勝負哲学(?)が頻出、ギャンブラーにはもちろんおすすめだが、勝負の前後に街へ繰り出すくだりは紀行文としても。川本三郎、太田和彦ファンあたりならストライクか。(CO)

FOOD

キムチ、ケーキ、サツマイモ…どれも尼っ子が愛したウマいもん。もちろん、オイシい話が詰まってます。食べ物つながりの3冊。


読んでるだけで白飯食べられる!?『金日麗のキムチ入門』

金日麗/農山漁村文化協会/著者は西立花町の焼肉店「高麗飯店」のママさん。白菜や大根はもちろん、セロリにタラコなどの変わり種まで51種のキムチの作り方を詳録。また40種のキムチ料理レシピのほか季節別キムチ早見表といった、辛い、いや痒い所に手が届くキムチ愛は必見。(CO)


洋菓子界のゴッドファーザー『仕事魂』

比屋根毅/致知出版/洋菓子のエーデルワイスを一代で築いた立志伝。杭瀬で修行、立花で創業したまさに尼崎インダストリー。ご飯を食べず、3食ともお菓子だけという創業時のエピソードはすさまじい。「技を磨く剣豪の世界」と記すように、理想の洋菓子を求める姿は感動的だ。創業40年の軌跡。(KM)


世代をつなぐサツマイモの物語『僕はアマイモ』

文・森本茂樹 絵・綱本武雄/センター赤とんぼ/かつて城下町で育ったアマイモが、台風による絶滅から、人々の思い出と情熱で今の時代によみがえる。農村から都市へ、風景は変わっても、街には変わらないものがある。幻の郷土野菜の物語が三世代をつなぐ絵本に。(WK)


[ブックレビュアー]
CO=大迫力 KM=加藤正文 KA=香山明子 MJ=松本創 TM=田中正郎 TT=綱本武雄 WK=若狭健作

1500年前に「尼崎本」があった!?

「メイドイン尼崎ブック」の評判を調べるため「尼崎本」とネットで検索する。すると、万葉集、平安時代後期、本切…?どうやら同名の作品がすでにあったようだ。

日本最古の歌集として知られる「万葉集」の第20巻。古写本が尼崎で発見されたため「尼崎本」と呼ばれている。現在は京都大学附属図書館に保存されている。思わぬ尼崎ネタ発掘である。