サイハッケン 老舗旅館に良センスなバーがあった

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

会話の端々に「出屋敷愛」があふれる女将・京子さん

たぶん尼崎に住んでいても、出屋敷に小さな旅館が多いことを知る人は少ないのではないだろうか?そのほとんどが旧い木造の一軒家風で、住宅街にひっそりとあるからだ。かく言う筆者も、旅館の存在は知っていたが、まさかこんなバーがあるなんて思いもよらなかった。

出屋敷駅の北側、家々の合間の細い道にある[竹家荘旅館]。植木に覆われたザッツオールドスタイルな門をくぐると「泊まり3500円~」の案内の横に今っぽい小さな黒板。玄関先の建具やタイルも、年季は入っているが丁寧に手入れされてきたことが伺える。その奥の小さなカウンターが[BamBooBar]だ。

3代目女将の樋口京子さんが「泊まりのお客さんにゆっくりしてもらいたい」と、60年続く老舗旅館をちょいリノベーション。宿泊客や商店主、近所の尼っ子たちが「焼き鳥食べて来てん」「立花にも旨い店あるで」と、エイジレスな世間話で夜な夜な盛り上がっている。この旅館を継ぐ以前はオーストラリアでレストランを経営したこともあるという京子さん、「旧いものを活かして何かしたい」というバイタリティのおかげで、また一つのコミュニティが生まれつつある。

ところで、出屋敷に旅館が多いのは、沿岸部の工場へ働きにやって来る人たちの宿泊地として活躍したという歴史の名残(中にはあんまり風紀上よろしくない所もあったようだけれど)。こちらの[竹家荘旅館]も、沿岸部にあった川崎重工や旭硝子の社員の御用達だったそうだ。レトロで洒落た空気の中で飲めることも(しかも安い)もちろんだが、新しくて今的に楽しいニュースの中に街の歴史をふっと感じることができることも、とても嬉しい。■大迫力


竹家荘旅館

営業は月~金曜の午後8時から。
ビール500円、ショット500円~。
要電話予約 宮内町2-28 06-6411-2525