THE 技 若い感性と発想力でガラス瓶を彩る

ものづくりのまち尼崎に息づく匠の技の数々。最先端技術、職人技、妙技、必殺技…。
アマから繰り出されるワザに迫る

和光化学工業株式会社 尼崎工場 西向島町111

ガラス張りにしてもいいくらいスッキリ清掃された工場。塗装工場に想像されるシンナー系の匂いはまったく気にならず、若いスタッフが生き生きと働く。

「『オフィス街の真ん中にあっても違和感のない工場にしたい』というのが社長のポリシーなんです」。和光化学工業で尼崎工場責任者を務める富田将太さん。23歳にして60人の従業員をまとめる工場長だ。

世界で初めてガラス瓶の静電塗装を実用化した同社。静電気を利用して塗着率を高め、透明な瓶を様々な色や風合いに仕上げる技術で、化粧瓶や酒瓶、芳香剤の瓶などの塗装を手掛ける。

本物の陶器を持ってきて「こんなガラス瓶を作って欲しい」と依頼も舞い込む。「『無理だ』とは絶対に言わないんです。まず試してみる」というのが同社のモットー。

美味しそうな瓶
飾られた陶器の風合いが、中のお酒をより美しく演出。写真は黒糖梅酒の瓶。

ツルっと滑らかな瓶に陶器の凸凹した風合いをどう表現したらいいか。試行錯誤の末、いつもなら失敗作になるブツブツした塗装にヒントを得たという。先入観を持たない若い感性から生まれた開発秘話だ。

発色は太陽の下、ショーウィンドウ、バーカウンターなど、あてられる照明によって変化する。環境によって常に変わる色を見極め、クライアントの要望を表現するには、柔軟なセンスが求められるのだろう。

「ガラス瓶はリサイクルしやすい。塗装技術でその可能性が広がれば」と環境に配慮した技術開発にも積極的に取り組む。職場環境に配慮した工場設備、そして爽やかでイケメンの工場長。工場と住居が混在した「ものづくりの街」の未来がここにある。色鮮やかな酒瓶を持ち、熱く語る富田さんを見てると、工場ではなくバーにいるような気がしてきた。


okamammoth
1971年尼崎生まれ。工業デザインを志し、気がつけば建築の深みへ、アマ発の建築を考える。