ツクラナイマチヅクリ 第11回 南信州おひさまファンド

新たに施設などを作らずに、地域の資源を上手く活用したまちづくりを紹介。

金は工夫で集めるもの 補助金いらずのまちづくり

「めっちゃ良いアイデアやん。やってみよう」と意気込んでも、「そういえばお金あらへんなぁ」ということで、すぐに頓挫してしまう確率50%。金なら何とかなるといって絶対ならない確率100%。世の中金余りだといっても、なかなか地域にお金は落ちてこないのが現実です。

長野県飯田市でも、環境にやさしい太陽光発電事業を地域でやってみたい、まちづくりだ!!と思っても、事情は尼崎と似たようなもので景気も良くなく、寄付も集まらない。じゃぁ資金はどうするのか、という壁にぶつかりました。補助金をもらえば良いと考えますか?

違います。別に補助金なんてつくらなくても、工夫次第でお金は集まるのです。

飯田市では、市民1人1人から広く薄くお金を出資してもらうことでファンドを組成し、そのお金を太陽光発電事業に長期投資してもらおうと考えました。それが「南信州おひさまファンド」です。

ファンドと聞いて、嫌な気分になる阪神ファンの皆さん、安心して下さい。「南信州おひさまファンド」は、太陽光発電事業の意義に賛同する市民投資家から、1口10万円~で広く募集し、集めたお金は同事業にのみ投資されます。ファンド総額は約2億円で組成期間は10年~、年間配当利回りも2%(目標値)と、銀行に預金するよりかは高めです。発電した電気は、飯田市が20年間の長期契約で購入することになっていますので、安定したキャッシュフローが見込まれ、配当や事業費はこれでもってまかなわれます。お金を出資したのは普通の市民の皆さんばかりです。別に機関投資家や金融機関が出したわけではありません。中には飯田市以外の人も含まれていました。

なぜこんなにお金が集まったのか、ということを金融的にきちんと説明すると①「広く薄く」ということで、リスクが分散されている②自治体との長期買電契約が締結されているので、一定の元本が確保されている③環境にやさしい地域プロジェクトを投資対象とすることで、投資家に寄付的心理状態を喚起させる―ということです。そのほか、匿名組合出資制度を利用していることなどいろいろあるのですが、要は最初にきちんと知恵を出して、スキームを作り上げたことが何よりの成功要因と言えるでしょう。

こんなファンドなら、好感が持てるという次第。別に補助金なんてもらわなくたって、自分たちの力でお金は集まるんです。どこかで似たような聞いたことあるなぁと思ったら、昔、大阪商人達がお上に頼らず、自分たちで橋を架けた、という話でした。

南信州おひさまファンドの概要

http://www.ohisama-energy.co.jp/


齊藤成人●さいとうなるひと
日本政策投資銀行 調査役