サイハッケン 津軽三味線ライブハウスがあった。

長く住んでいても意外と知らないまちの愉しみ。「へえ~」と目からウロコの再発見!
ディープサウスの魅力をご堪能ください。

尼崎と沖縄の縁の深さはおなじみだ。奄美など九州もしかり。それがなんと津軽だという。十代の数年間、青森県人だったこともある身としては、一も二もなくJR尼崎駅前の「和楽」に出かけた。全国に二軒しかないという「津軽三味線ライブハウス」である。

駅徒歩1分の津軽半島

店は小上がり席のある家庭的な居酒屋風。奥にある舞台では、豪快なねぶた絵が躍る。それを背に、店主でもある竹田傑さん(52)とお弟子さんの女性が太棹三味線を抱えて並んだ。

最初の一音で空気が変わった。郷土料理「あっぱ焼き」をつつく箸を止める。

南方の三線(さんしん)が、訥々と、鷹揚に聴く者を包み込むカントリーブルースだとすれば、津軽三味線は研ぎ澄まされた音の切迫感で聴く者を巻き込むサイケなブルースロックだ。ジミヘンだ。手拍子だの合いの手だのと、うかつに初心者を立ち入らせない厳しさがある。なんというか、響きがしょっぱいのである。

尼崎の高校時代はロックギタリストだったという竹田さんは1988年、89年の津軽三味線全国大会を連覇。邦楽トリオ「和楽童子」を率い、アジアや欧米、豪州、南米まで股に掛ける名手。プロ初舞台がモダンジャズの巨人エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)との共演だったというのもすごい。

「津軽三味線はもともと、盲目の僧が日々のお米を得るために弾いていた。だから響きが切実なんです」。解説してくれた竹得水子さん(61)は、竹田さんのパートナーで民謡歌手。「津軽じょんがら節」など3曲を歌ってくれたが、実は鹿児島出身なのだという。

薩摩女の歌う津軽民謡。北と南が、アマで出会った。


和楽

長洲本通1-3-1
JR尼崎駅南口すぐ
月曜休 17:00~23:30
ショータイムは19:30、21:30の2回。約30分。06-6489-4658


写真と文・松本 創