名言とまちへ 第2回

巨匠の言葉は、万人の心をつかんできた。彼らが生み出した名言・金言は、ここ尼崎南部でも感じることができるのか。まちへ繰り出し検証。「巨匠センセー、これってそういう意味ですよね?」

神は細部に宿る ミース・ファン・デル・ローエ

「細部に街の神が宿る」って解釈もアリですか?

「小さな神々」お地蔵さまが迷い子になっている。

尼崎市築地地区には地蔵が多く、地域の人が散歩途中に立ち寄って花を添えたり、地蔵盆が華やかに開かれたりと、街の心のよりどころだった。大きな数珠を手に子どもたちが輪になって歌い、お供え物のお下がりに、とお菓子をもらう。心待ちな夏休みの行事だったに違いない。

建物の大半が被害を受けた阪神大震災の時でさえ、地域を見守り続けた10体以上のお地蔵さまが、震災復興の区画整理事業で居場所を失ってしまった。

寺社とは違い個人の好意で、敷地の一部に置かれていたもの。区画整理で新たな敷地を住みはじめた人々にとっては、もうお地蔵さまを置く余裕はない、という訳だ。先祖代々受け継がれたものを粗末に扱うつもりはなくても、震災後の建て替えの負担は大きく、仕方のないことかもしれない。

行く当てのないお地蔵さまは寺社や個人が保管しているのが現状。「譲って欲しい」という声が石屋さんや遠方からも多く寄せられた。「地域の財産」が実際に人手に渡ることはなかったが…。

「神は細部に宿る」の細部とは原語ではディテール、素材であり「細部まで気を抜かない」という解釈が一般的だ。具現と抽象で神の意味は違っても、「細部が要」という意味でとらえると、少しは名言が身近になる。

地域の要として人々に大切にされてきたお地蔵さまたち。「小さな神々」の行方が気がかりだ。

Mies van der Rohe ミース・ファン・デル・ローエ

20世紀を代表する建築家。鉄・ガラス・鉄筋コンクリートで従来の建築物の概念を覆す。彼のデザインした有名な椅子バルセロナチェアはCMや企業のゲストルームなどでよく見かけます。本名ルートヴィッヒ・ミース・ファン・デル・ローエ。1886~1969。


綱本琴●つなもとこと
1975年神戸市生まれ。武庫川女子大学生活環境学部生活環境学科建築都市設計学研究室助手