ツクラナイマチヅクリ 第8回 六本木ヒルズ?

新たに施設などを作らずに、地域の資源を上手く活用したまちづくりを紹介。

六本木ヒルズは尼崎で成り立つのか?

行ってきました六本木ヒルズ。エリア面積11.6ha、オフィスタワー面積38万平方メートルの巨大オフィスビル。今や東京一の観光名所です。いわゆる「再開発事業」として整備されたわけですが、そもそも再開発っていったい何なのでしょうか。簡単にいえば、古い小さな建物が密集している場所を全部買い取って更地にし、そこに大きな建物をたてよう、という手法です。新しくて立派なビルさえ建てれば、家賃も高くなり、今まで以上にその場所にみなさんがたくさんのお金をおとしてくれるはずなので、その増収分をあてこんでビルを整備しましょう、という発想に依っています。こうした再開発事業は、わざわざ再開発しなくても良いところも含め全国あちこちで行われ、わずか40年で各地の駅前の風景を金太郎飴のように変えてしまうという荒技を実現しました。

今回は「六本木にあるならアマにもヒルズをつくらんかい。地域が活性化するかもしれんで~」という声にお答えして、果たして尼崎に六本木ヒルズを建設できるのかどうか考えてみました。 

まず土地の確保ですが、国道43号線以南の約1000haもあるのでなんとかなるでしょう。土地代は仮に30万円/平方メートルとすればたったの350億円。オフィスビル建設だって、超高層ビルになるはずですがそこはアマ価格ということで建築単価坪100万円で安くすまして、たったの1150億円。ということは1500億円でとりあえず六本木ヒルズ並みのオフィスタワーができるのです(六本木ヒルズは商業施設や住宅棟なども建設していますので、総事業費は2700億円)。1500億円は尼崎市民46万人全員が一所懸命支払う年間住民税のおよそ9倍ですが、気にしません。オフィスタワーの延床面積は38万平方メートルですが、EVやホールを除いて純粋にオフィスとして使用できるのは85%の32万平方メートル程度でしょうから、面積からいえば最低2万人はこの場所で働かなくてはテナントは埋まりません(1人当たりのオフィス面積は15平方メートルと設定)。もちろんそのためには、尼崎市内の全オフィスワーカーの3分の1以上が強制的に移ってもらわなければなりませんが、それまた気にしないことにします。建てさえすれば、どこからか人はやってくるでしょう。建設費は2割ぐらいは補助金をもらい、残りはどこかから借りてきましょう。きっと貸してくれるはず。20年・金利3%固定で借りれば、利子分も含めてトータルの支払は1600億円ほど。ということは平均毎年80億円ずつ返済していけば良いということになります。そのためには、毎年約530億円程の売上をこのビルから稼げば何とかなるでしょう(営業CF対売上高比を15%程と設定)。その売上を達成するためには、計算すると尼崎ヒルズのオフィス賃料は月坪4万5千円です。現状の賃料水準の5倍以上とちょっと高めですが、景気さえよくなれば何とかなるでしょう。みなさん必ず入居してくれるはず…って、はよつっこまんかい。

モノをつくれば何とかなる、という考えはもうやめましょうね。


齊藤成人●さいとうなるひと
某金融機関勤務