フード風土 12軒目 Cafe&Lunch「potbelly.」

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

ミックスサンドで腹一杯になる幸福

好きな食べ物はと訊かれたら、迷わず「米です」と胸を張るご飯党だが、ときどき「ちょいとサンドイッチでもつまむとするか」としゃれた気分になることもある。フード特集で腹が膨れた今回は、そんな「サンド気分」だ。

武庫川駅を降りると、すぐ目に入る喫茶店「potbelly.」。ナチュラル指向のかわいい店構えは、すぐ脇の河原で青空将棋に熱中するおっちゃんたちのディープな空気とは好対照。バンダナを頭に巻いたオーナー南野公子さん(53)とオーバーオールのチーフ渡邊千香さん(28)の笑顔が明るく迎えてくれる。

サイフォンで入れるコーヒーの香りと、なぜか70年代アイドルたちの初々しい歌声。キャンディーズに太田裕美、山口百恵。あ、壁にはヨン様の写真が。「お客さんで好きな人がいて…」と微笑む南野さん。秋晴れの昼下がり、少々のミスマッチもさわやかだ。

ミックスサンド(500円)はパンを焼くか焼かないか選べるが、まずはトーストで。薄切りハム、厚焼き玉子にトマトとキュウリ。薄く延ばしたケチャップに粒マスタードがアクセント。ついつい一気にほお張ってしまうのは、ご飯党の「かき込み癖」とご容赦を。おお、ふわふわ玉子に、ジューシーにしたたるトマト。誰がなんと言おうと、サンドイッチは野菜の鮮度がキモだ。

「特別な材料は使っていません。常連のお客さんは1日に2、3回来てくださるのでとにかく安く、と」

シンプルな素材でふくよかな味を作り出す。冷蔵庫の残り物を見事にアレンジするベテラン主婦の仕事だ。

「半分サンド」(300円)はその名の通り半分の量。女性に人気とのことだが、ここはミックスサンドをもう1つ。今度は焼かずに。

ところで、店名のpotbellyって何ですか。

「太鼓腹っていう意味です。私の趣味のバス釣りでは、お腹の大きいバスのことをいうんですが、お客さんにもお腹いっぱいになってもらおうと思って」と渡邊さん。

あはは。さわやかな「サンド気分」のつもりでも、やっぱり「腹一杯」からは離れられないワケね。のどかな川べりの光景を眺めながら、思わず腹をさすった。■松本 創


12軒目 potbelly.(ポットベリー)

尼崎市武庫川町4‐9
06-6413-2922
営業時間 7:00~19:00
定休日 日曜定休