サイハッケン 自動車整備工場で生まれた水虫薬があった。

長く住んでいるまちにも意外と知らない魅力はまだまだあるもの。「へえ~こんなん知らんかったわ」という目からウロコの再発見!尼崎南部、ディープサウスの魅力をご堪能ください。

昔から、「餅は餅屋」という。専門性の高い分野は、得意とする人に任せた方がいいという故事だ。しかし―。

今から25年ほど前、元浜町にある自動車整備工場を経営する今里源太郎さんが、水虫の薬を作った。きっかけは、従業員が日々悩まされていた水虫。工場では、年間を通じて鉄板入りの長靴を履く。安全性は保証されるものの通気性が悪いため、仕事に支障を来すこともしばしば。

いたたまれなくなった今里さんは、専門書を頼りに自作の薬を調合。自分の足を実験台に、6年の歳月をかけて完成させた。塗料を薬品ではがすように、患部をはがして治療するというアイディアが決め手になった。

お話をうかがった腰山夫妻。
エフゲン250ml(12,600円)60ml(3,465円)30ml(1,890円)すべて税込。臨床試験を担当した藤田さんのイニシャルと開発者・源太郎さんの名前をあわせてエフゲン。

本社は、もともと自動車整備工場の社屋だった所。今も隣接して営業する

「変人扱いされて大変でしたね」実の娘にあたる腰山峰子さんは語る。薬の効用を試すには、悪化した患部が必要である。そのために、水虫を患う人の靴下や履物を借りていたという。父親の行動を恥と思っていた家族は、周囲の視線を敏感に感じ取っていたのだ。

厚生省から医薬品としての認可を取得するための臨床データ作りには、神戸労災病院名誉院長の藤田登さんがあたった。実は、彼も水虫に悩まされていた。薬を自分の足に使い、その回復ぶりに感心して協力を約束。123もの臨床試験で、97.5%という高い有効率が示された。開発に着手してから、すでに10年近い歳月が流れていた。

だが、元をたどれば素人が作った薬。薬局を奔走するものの、門前払いの日々が続く。そこで、長靴を着用する工場や商店などの「現場」を回った。返事は、「俺に効いたら宣伝したる」。同じ悩みを媒介にして、薬の評判はその効果のようにじわじわと広がっていった。

東洋のマンチェスターと呼ばれた工都尼崎。その片隅で、多くの労働者の傷を癒す努力が続けられていたのである。■綱本武雄


大源製薬株式会社

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