パイプあま 第3回 暮らしを守るパイプ

尼崎の腎臓に行った

汚泥焼却施設

武庫川下流浄化センターに異形のパイプがあると聞き早速訪れた。このセンターは武庫川沿いの宝塚・伊丹・西宮・尼崎市民74万人が1日に出す46万トンの下水を処理する能力を持つ処理場である。これだけの下水を処理して湾内に放流するのであるから、地域の腎臓と言えばよいか。

下水処理場であるからごついパイプがあるだろう、くらいには考えていたのであるが、処理場は、単にパイプを下水が流れてくるだけではないのである。下水であるから、水には汚物を含んでいるので、モッタリと流れにくい。で、上流から少しずつ勾配をつけて、下流側に流れやすくしているのであるが、武庫川沿いにおよそ16kmの距離にわたってつけられた勾配によってセンターの場所でおよそ地下10mの地点を流れているそうである。これを地上まで汲み上げるためのポンプが表題のMKV-120である。これに直径2m程はあろうかというパイプが連なり、雨水を中心とした汚水を沈殿池へ汲み上げている。まずここで、その音と迫力に圧倒されてしまうのである。

ここで汲み上げた下水が沈殿池で処理されていく。その沈殿池の地下通路を這い回るパイプが本日2種類目のパイプである。直線距離で100mはあろうかという沈殿池の地下道にはりめぐらされたパイプをくぐりながら歩くと、ちょっとした探検気分を味わえるのである。通路にはラックを吊って電気配線も数多くはりめぐらされており、下水処理場が単に薬をまくだけでなく複雑な工程を経て汚水を処理していることがよくわかる。

地下から水を汲み上げるMKV-120
地下通路を這い回るパイプ

沈殿した汚泥を焼却する機械が本日3種類目のパイプ。このセンターが海辺に建っていることもあり、稼働開始から16年は経とうかというのに、この焼却施設のステンレスのパイプ群は真新しく、そして筆者好みにこんがらがっている。

と、いずれのパイプも劣らぬチカラ(圧倒的な物量を処理しているモノが発するエネルギーといえばよいか)を感じるのだが、やはり、センター地下から沈殿池へ汲み上げるポンプ+パイプ群の迫力は並ではなかった。このパイプが力強く稼働してくれている限り、街の衛生は確保されるのである。


tts
建築を学問する34歳。
産業遺産、とくに生産設備系の施設の造形的な面白さに惹かれて今日に至る。