「アマのええとこも悪いところも愛おしいと思います」CHABA vocal&guitar 平野一郎

日曜日の22時、阪神梅田駅地下通路。阪神百貨店のシャッターを背に、ギターと三線を抱えたデュオCHABAのライブが始まった。尼崎・大阪のストリートから、今年東京に進出した彼らの凱旋を待ち受けたのは200人を超すファンたち。若い女性はもちろん、子供やホームレスのお年寄りの姿も交じっている。

ボーカルとギターの平野一郎さん(28)は尼崎の杭瀬育ち。「僕の人格のほとんどはアマで作られた」という。若草中学校、小田高校に通い、友達のほとんどが生粋の尼っ子だった。大阪芸術大学に進んだ平野さんは、久しぶりに地元の友達に会うとからかわれたという。「なんやねん、きっしょいしゃべり方して」。話し方が“お上品”になっていたらしい。「なんかホッとしました、地元の友達と会話することでホントの自分の話し方を取り戻していく感じ。尼っ子は話し方がストレートすぎて困ることがあるので、無意識のうちに自分を押さえながら話してたんですよ」。

CHABAの結成は98年。平野さんはホテルアルカイックや杭瀬のラーメン店、レンタルビデオ店と尼崎市内でアルバイトをしながら夢を追い続けた。阪神尼崎駅前で。大阪のライブハウスで。地域の祭りで。心の内を吐き出すようにギターをかき鳴らし歌った。

東京での所属事務所が決まり、尼崎を発つ直前、ふらりと寺町のたこ焼き屋を訪ねた。「アマってええとこやね」。自然とそんな言葉が出た。「アマは着飾らんでええまちやで」。返ってきたおばちゃんの言葉がなんだかうれしかった。「アマってどこかくだけてたり、ちょっとだけずうずうしいかったり…。そんな感じが愛しいなあと、故郷を離れてみて改めて思うようになりました」という。

凱旋ライブのアンコール。ファンが横断幕を広げた。「ありがとう!CHABA大阪・尼崎を忘れないで!」。メッセージを見た彼はおどけてみせた。「尼崎市立若草中学です。阪神の伊良部の後輩やで」。200人が沸いた。「自分は尼っ子。どんな環境にも適応していけますよ」と言い残し、東京へ戻っていった。

CHABA

1996年結成。梅田駅地下を拠点にストリートライブを展開。三線とギターという独特の音楽感に乗せて青春を歌う。3rdミニアルバム「THE BEST OF CHABA -KINEMA ROCK YUUGI-」は全国のタワーレコードで発売中。