パイプあま 第2回 まちのパイプ建築を探せ

からまりあったパイプが「げいじゅつごころ」わしづかみ

工場建築がオモシロイ。ここでいう工場建築とはパイプや煙突などが建物にうねうねとからまっているものだけを指している。四の五の言う前に、写真である。何だか生命感みなぎる、力強さが感じられないだろうか?エネルギッシュである。文字通りアブラぎっているのかもしれない。

こういうのを地域の歴史遺産として博物館のようなかたちで残せないだろうか?のような動きが先進各国にある。そんな話は別にしても何故にこんなオモシロイ形になってしまうのか?

こうした建築の設計プロセスを考えるに、「必要な材料を必要な温度で、生産工程の各部を最短の時間かつ距離でつないでいく」のが基本であって、「そのための見映えなんぞは気にしない」はずなのである。じゃあ、それで出てくる形がつまらないのか、というと、これが不思議な力強さだったり、工程改編の履歴によっちゃあ奇っ怪な造形が現出していたりして、見る人の前衛的「げいじゅつごころ」をわしづかみにするのである。近未来を描いたSFに出てくる風景に、こんな造形の建築が多いというのも、そんなおもしろさにうなづく人が多いことを示しているのだろう。

そんな工場建築は尼崎の道路沿いや河川敷や海から見える所に数多くある。「ハイテク表現主義」の建築ほどの立派さはないにしても、何だかパイプのからんだ普通の建築だってそこここにあるはずである。建築家のデザインしていないそういうもののうち、おもしろいものを取り上げてみようというのが、この連載である。併せてパイプのからんだ工場建築も見ていきたい。そんな建築に心当たりのある方はご一報下さい。

ハイテク表現主義って?

建築物の構造フレームや空調・排気ダクトなど、従来ならば見えないように壁や床の中にかくしておくものを建物の外へ露出してデザインの手段として露出・強調した建築表現をさす。金属とガラスを効果的に用いたり、エレベーターなどをむきだしにすることで、先端的テクノロジーを象徴するような外観が特徴。特に有名なのは、パリのポンピドゥー・センター(1977年)、ロンドンのロイズ本社ビル(1986年)。ともに歴史的な石積みの街並みが連なる市街地に登場し、周囲のデザインボキャブラリーとはあまりに異なったデザインが論争を巻き起こした。ポンピドゥー・センター設計のイタリア人建築家レンゾ・ピアノ氏は、関西国際空港の設計者でもある。


tts
建築を学問する34歳。
産業遺産、とくに生産設備系の施設の造形的な面白さに惹かれて今日に至る。