お祭り日和

お祭りの日には帰ろう。そう思える魅力がまちの暮らしを繋いでいくのだろう

北出青年会のだんじり

後ろにずらずら車を従えながら、道の真中をゆるゆると進む山車。もちろん山車を取り巻く人達も同様だ。その取り巻きは好き勝手に山車から離れ、コンビニで涼んだり、喫茶店でお茶したり。十字路の真中で山車を降ろして皆地べたに座り込んで休憩。良くも悪くも若者のお祭り。地元のお祭り。ある意味まちに溶け込んでいた。

日が暮れた。昼間のダルそうな連中はどこへやら。祭りの主役は自分。誇らしげな顔で山車の上に立つ若者。それを下から応援する仲間の女の子。まだまだ山車(けんか)の駆け引きは任せられないな、と親分顔のおやじさん。いずれは上に乗ってやる、と鐘を打つ少年達。かっこいい。ここにはまだ若者の憧れとしてのお祭りがあった。

8月1日2日は貴布禰神社のお祭である。けんか祭り。勝負で山車は町の大切な武器。日頃から風あて、修理などに余念はない。常に先頭を行き、祭りを先導する辰巳町の太鼓櫓には真っ白の装束を着た太鼓の叩き手が乗る。激しく振られる神輿、その服装の意味は、もしもの時はそのまま棺に直行する用意だとか。

山車がふさいだ道で勝手に交通整理を始めるおじさん。日頃あれほどガラが悪い、気が短いと言われながらも、この日ばかりは大人しく山車に続いてのんびり運転。寄り道の店では「暑いなー。頑張りや」の触れ合い。地元商工会等による夜店が店を閉めた商店街の前に並ぶ。子供達の楽しみだ。細い路地の軒先にも提灯が下がる。山車を引く人のだけの祭りではない。其処此処のまちかどで皆を見守るお地蔵さんにも今日は特別な日。幔幕(まんまく)で飾られたりお供え物を頂き、一緒にハレの日を祝う。祭りはまちと溶け込んでいる。

「担ぎ手が足りない」いくら大きく、伝統のあるお祭りでも、形だけの繋がりでは魅力はあせていく。お祭りの日には帰ろう。そう思える魅力がまちの暮らしを繋いでいくのだろう。


北尾 琴(きたお こと)
1975年神戸市生まれ。武庫川女子大学生活環境学部生活文化学研究室助手。地域の生活や伝統・コミュニティに関心を持ち、これからのまちづくりの繋がりについて考える。吹田市在住。