マチノモノサシ no.18 尼崎の万博駐車場、駅前なら120時間駐車できる
尼崎にまつわる「数」を掘り下げ、「まち」を考えてみる。
ゴールデンウィークど真ん中の5月4日の尼崎駐車場の様子。台数にはまだまだ余裕がありそうだ。
世界中の国から人が集まる一大イベント、大阪・関西万博が4月13日から開幕した。前売入場券の販売数は969万枚だったが、そのうち企業が協力購入した分は700万枚以上だ。だから福利厚生として勤務先からチケットが配られたという話はよく聞くし、無料で行く予定の市民はたくさんいることだろう。逆に行ってくれないと、消費税の仕入控除ができないので会社側も困ってしまう。
とはいえ万博は尼崎からすれば文字通り対岸のイベントだ。尼崎にとってはどれだけの経済効果をもたらしてくれるかが、市民の一番の関心事項である。そこで尼崎関連の万博予算を整理してみた。
市内には「クリーンセンター第2工場」(阪神バス70系統終点)近くの敷地、いわゆる尼崎フェニックス事業用地に3000台が停められる巨大な万博用駐車場が11億円かけて整備された。駐車場代が1台5000円と、阪神尼崎駅前の市営駐車場なら120時間も停めることができる金額なのはご愛敬だ。
この駐車場と会場を結ぶシャトルバスに25億円、駐車場警備に6億円の予算が万博協会予算から付けられている。また駐車場の隣ではプロモーションイベント「ひょうご楽市楽座」が開催され、フードトラックがでるイベントが毎週末行われている。こちらは4.2億円の予算が県から出ている。さらには万博とセットとして県内で行われるイベント「ひょうごフィールドパビリオン」(2023~2025年度で計7.2億円)の対象に「尼崎運河探検クルーズ」が選ばれている。
このように尼崎関連だけでも50億円近いお金がかけられ、財政が厳しい尼崎としてはまさに大判振る舞いのイベントだ。このうちどれだけが尼崎市民の給料として落ちてくれるかが尼崎にとってはカギとなる。また万博に行けば警備員としてかなりの数の高齢者が働く姿が目に入るので、この人達の中にもたくさんの尼崎市民がいることだろう。
もちろん万博自体の評価は一般には入場者数に尽きる。もともと想定入場者数は2820万人だが、計画ではそのうちの80%・2200万人が有料入場者として969億円の売上を得る計画だった(単価4400円)。だがチケット価格と愛知万博時の物価水準を加味して比較すれば実質4割ほど高くなってしまっている。そのせいか開幕1か月での1日当たりの平均来場者数は10万人程度と想定を下回ってしまっている。それでも阪神尼崎駅の乗降者数に近い数なのだ。果たしてどうなるか。
文=齊藤成人 ダイヤモンド・オンラインで「シン・最高の空港の歩き方」を連載中です。