THE 技 国内シェア90%を誇る 空飛ぶ「箱」職人
最先端技術、職人技、妙技、必殺技…アマで繰り出すプロのワザに迫る
きぞはるさん自身は「そこそこの腕前」だが、自らエントリーして大会を盛り上げる。
いくつもの箱が音楽にあわせて宙を舞う。キャッチが決まると拍手や歓声がわきあがる。シガーボックスと呼ばれるジャグリングの大会、その名も「箱大会」が今年4月に大阪で開催された。全国から64名のジャグラーが集い華麗な技術を競う。
今回はジャグラーの技、ではなく、ほとんどの出場者が愛用する箱に尼崎の職人技が隠されているという。工房の名は「きぞは工房」。代表のきぞはるさんが、西立花町の自宅兼工房でジャグリング道具を製作している。「きぞはこ」と名付けたその商品の国内シェアは90%を超える。「大会で実際に数えていると僕の箱の割合がどんどん増えてきて」と手ごたえを感じている。
2014年に友達の結婚式の余興で挑戦したシガーボックス。練習して披露した手応えが忘れられず、熱中するようになった。しかし1箱4000円もすることと海外製品の輸入終了から自作することに。その出来がジャグリング仲間から評価を受けて製作に没頭したという。

西成区民センターで二日間開催された大会。宙を舞うカラフルな箱に盛り上がる
16年にオンラインショップをオープンし18年には勤めていた機械設計の会社を退職し専業に。ポリカーボネート板を接着し強度を保つには高い技術を要するそうで、面が平滑で箱と箱の吸い付きのよさがうけて、累計7300箱を売り上げている。
大会でジャグラーたちに聞くと「軽くて丈夫」「角がつぶれにくい」「耐久性が高い」など「きぞはこ」への高い評価と信頼が寄せられた。そのことをきぞはるさんに伝えると「メーカーとしては買い替えてもらわないと儲からないんですけどね」とはにかみながらも誇らしげだ。
他にも「落としたときの音が軽やか」「いろんな箱を試してきたが革命的だった」「ジャグラーのレベルが底上げされた」など称賛の声を伝えた後、きぞはるさんを撮影した。職人としての喜びがその決めポーズにあふれていた。
写真・文=若狭健作 きぞはるさんのジャグリングトークが面白すぎて工房にもお邪魔しました。