【雇用を圧迫】【治安が悪化】は果たして本当なのか?

SNSでは排外主義まるだしで在日外国人を罵るアカウントが目につく。だけど街に出ると、工事現場やコンビニなど、外国人が支える職場をたくさん目にする。

日本の総人口は1.2億人、そのうち外国人は約350万人。そんなに?と思うかもしれないが、割合ではわずか3%にすぎない。

一方で海外、移民の国といわれるアメリカでは人口に占める外国人の割合は15%、ドイツでは19%とそこまで高くはない印象だ。UAE88%、カタール77%といった中東の国では外国人は建設業やサービス業の担い手であり、彼らがいないと国を維持できない状況にある。

で、日本である。働いている人は約6800万人、これは実際に働ける人の97%で、経済学的にはほぼ完全雇用が実現されていると言っても良い。ようは外国人労働者が日本人の雇用を圧迫しているわけではないのだ。

中でも建設、飲食、介護といった分野の有効求人倍率は2~3倍で、まだまだ日本では人手不足が著しい。こうした分野では外国人労働者がいなければ業界が成り立たないのだ。おそらく日本人が就職したいのは、デスクワーク、いわゆる事務職の分野で、バッティングはしない。繰り返すが日本人の雇用を奪っているわけではないのだ。

さて法務省が2023年に行った調査がある。外国人労働者の増加を「好ましい」と回答した人が29%、「好ましくない」と回答した人が23%で、大半が「どちらでもない」という意見だった。ネガティブな意見として、「地域の治安・風紀が悪くなる」と45%が答えており、治安面では漠然とした不安があるのだろう。

そこで実際の数字をみたい。起訴・不起訴にかかわらず、実際に検挙されている外国人は20年ほど前をピークに減少傾向にあり、今は年間1万人程度だ。これでも全体検挙数の約5%で、日本の人口あたりの外国人割合は3%なので、決して外国人の犯罪率が際立っているとはいえない。

いやいや、そもそも人の国にやってきて犯罪をするなよ、と言う意見もあるかもしれない。国外での日本人の犯罪は年間100件程度だから、余計に目立つのだろう。ただ犯罪をした外国人には日本の職場で非人間的扱いを受け、生活苦で犯罪に手をそめた人も含まれているのもわかって欲しい。

結局、今後「人口が減少しインフラやサービスを維持できなくなる貧しい国になっても日本的文化を守りたい」のか「文化は変質していくかもしれないが、今の生活水準をある程度維持していきたい」のか、選択せざるを得ないのだろう。若者が決める話だが、彼/彼女らは生まれた時からグローバルが当たり前な世代でもある。高度経済成長期に阪神間が西日本の田舎から労働者として人を集め、工業地帯を発展させたことを思い出せば、この問題を理解するのはそう難しいことではないだろう。


文=齊藤成人