数字で見よう尼崎の多国籍事情
尼崎にはどんな国や地域にルーツを持つ人たちが移り住んでいるのだろう。2024年に策定された「あまがさき多文化共生施策アクションプラン」から、まずはデータをおさえよう。
今から30年前の1995年、尼崎市には約1万4千人の在留外国人が住んでいて、そのうち韓国・朝鮮籍が約1万2千人と8割以上を占めていた。
2025年の現在、本市の在留外国人の人数はほぼ同じだが、韓国・朝鮮籍は約6千人まで減少している。一方、ここ10年でベトナムやネパール、インドネシア籍の増加が著しく、中国やフィリピン籍を含む、いわゆるニューカマーと言われる人たちが本市の全在留外国人の半数を超えるまでになっている。
さまざまな在留資格
在留資格を見ると、技能実習、技術・人文知識・国際業務(語学教師やエンジニアなど)が多く、家族滞在、特定技能1号(介護、建設、ホテル、外食業など国が定めた分野)、留学が続く。ホテルや飲食店でアジア系の外国籍の人をよく見るようになったのは特定技能の増加によるため。留学生がコンビニなどで働いているのは、資格外活動許可という制度で、週に28時間以内の労働が認められているからである。
労働者の受け入れ
日本全体で、働き手不足から外国人労働者の受け入れが進んでいる。本市の在留外国人の人口構成を見ても、20代、30代の若手世代が極端に多くなっていることからもうかがえる。連動するように市内の学校や保育所では外国籍の子どもたちも増えている。
本市では2022年、市内に住む18歳以上の全ての外国人に生活実態アンケート調査を実施。1000を超える回答があったが、回答率は約1割と低く、結果的に日本語能力の低い人の回答が少なかったという反省がある。
孤立を生む言葉の壁
この点も踏まえてアンケート結果を見ると、回答者の多くは日本のルールやマナーを知っており、Facebookを利用して行政情報を得ているものの、保育所や学校からのお知らせが読めない、特に行政用語が理解できない、また防災面では避難所を知らないという課題が浮き彫りになった。
また日本人の配偶者や外国籍家族など比較的在留歴が長くても日本語は「単語だけ」「ほとんどできない」という人がおり、地域社会から孤立しているのではないかという懸念がある。
尼崎の受け入れ文化
こうした実態を受け、2025年から10年間の多文化共生に向けた取組の方向性を「尼崎市多文化共生社会推進指針」に、また3年程度で重点的に取り組んでいくことを「あまがさき多文化共生施策アクションプラン」にまとめている。
高度経済成長期に日本全国、特に西日本を中心に職を求めた若者が、尼崎市へやってきた。本市はそれを良い意味でのおせっかいをする人がいたりして、温かく受け入れてきたという誇らしい歴史や風土・文化がある。先人にならい、次は祖国を離れ、言葉もわからないところへやってくる在留外国人の皆さんを受け止める時だと思っている。
文=立石孝裕 尼崎市総合政策局文化・人権担当部長(当時) とうとう左肩も五十肩になりました。