フード風土 45軒目 中島南店

よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。
取材・文=松本創(本誌)

地酒と炭酸、立ち飲みの縁

地酒というのは全国津々浦々、地元の酒飲みや酒屋からなる応援団に支えられているものだ。「とにかく1杯飲んでみて」と熱心に勧められ、原料の米や水や蔵元に関するウンチクや郷土自慢とともに味わう経験を、九州でも東北でも、自分の住む神戸の灘でもしたことがある。

地酒は常時50~60種。コップ1杯で400円~。名物の炭酸水を使った酎ハイ各種も人気。おでん、すじこん煮、マグロ刺身などアテももちろん充実。

いま尼崎で最も熱い立ち飲みと聞いて、この夏出かけた[中島南店]もそんな店だった。「地酒は何が…」と言うや否や、店主の中島雄一さん(44)に冷蔵庫へ手招きされ、次々と試飲を勧められる。宮城の「蒼天伝(そうてんでん)」、福岡の「喜多屋」、高槻の「清鶴」。おお、わが家で愛飲している灘・御影郷の「大黒正宗」もあるのが嬉しい。

しかし、いかに上質な純米酒・吟醸酒とはいえ、20種近くを試飲すると効く。細かい記憶は飛び、思い出すのはボートレース中継に沸く店内のみ(ここは尼崎競艇のすぐ裏手なのだ)。酔った頭で「これ? 蒼天伝。そうでんねん」と寒い駄洒落を思いついたが、そのまま口走ったか、踏みとどまったか…。

で、1カ月ほど後に出直し、あらためて「蒼天伝」を何種類か試した。気仙沼の蔵元、男山本店が造る銘柄。なかでも特別純米はフルーティーな甘みと香りがありながら、飲み口はキリリと切れがよく、好みだ。

中島さんがこの酒を扱うようになったのは、3.11の大津波被災地である気仙沼市の復興を尼崎市が支援しているのがきっかけだったという。

「僕ら酒屋に何ができるか考えたら、やっぱり酒を売ること。気仙沼にどんな酒があるやろ、と調べて出会ったのがこれ。いまも年に一度は蔵を訪ねますよ。うちで扱う酒はみんなそう。酒だけやなく、蔵との出会いから付き合いが始まるからね」

地酒は、酒の味だけでなく、こうして土地の縁や人との出会いによって広がってゆくのである。筆者も震災取材で東北通いの身、次に気仙沼へ行った時はこれだなと心に刻み込む。

この店での出会いがもう一つ。水代わりに出てきた炭酸水。喉に痛いほど鮮烈な発泡感が、暑さと酔いを洗い流してくれる。

「うちのサーバーは特別でね、炭酸含有率を高く設定できるんですわ。暑い日には炭酸水だけ飲みに来る人もいるぐらい」

地酒のチェイサーに炭酸水。蒼天伝にソーダ。そうでんねん、そーだそーだ…いかん、まだ酔っているかもしれない。


45軒目 中島南店

大庄西町4-8-16
10:00~20:00 不定休
TEL:06-6416-9192