神主のぶらり街歩き

連載第16回 ハチミツの香りに誘われぶらり

国道43号線の五合橋交差点を南へ車で約5分。東海岸町の一角で阪神高速湾岸線の真下近くに「尼崎鉄工団地」があることをご存じだろうか。この鉄工団地は昭和42年に設置され、現在24社が工場などを操業している協同組合だ。周辺は一帯が工業専用地域。たまたま見ていたテレビのニュースで「ミツバチ養蜂」がこの地域で行われていることを知って、神社から歩いて訪ねてみた。

五合橋線を南下。住友金属工業や三菱電線工業、ダイソーなど、日頃は自動車で安全祈願に訪れている工場も、歩きながら覗いてみるといつもと違い優しい表情を見せてくれる。トラックの排気ガスに苦しめられたが、約30分で尼崎鉄工団地協同組合に到着した。

組合内の建物の屋上に巣箱が3箱設置されていた。しかも箱にはミツバチが多数出入りしており、ここで本当に養蜂が行われていることが分かる。4月の終わりに巣箱が設置されて以来、8月9日までに8回の作業で累計212.6㎏のミツが採れたそうだ。

しかし、なぜ鉄工団地でハチミツ養蜂なのか? 「工場緑化の取り組みがきっかけなのです。組合の西村理事長が『銀座ミツバチ物語』という本を会議で紹介され、大都会でもできるなら鉄工団地でもできるのではないか、と検討が始まりました」と島田事務局長。

銀座ミツバチプロジェクト事務局や神戸市東灘区の㈲俵養蜂場などを訪問して様々な助言を受け、具体的に話が進展。工場街であること、海辺であることなど、養蜂ではほとんど前例が無い環境の中、6万匹のミツバチとともにスタートを切った。

これまで200kg以上が採ミツされたとなると、半径3kmを飛ぶミツバチがミツを集める花が十分に工業地域にあったという証明にもなる。メディアにも多数取り上げられるなど、話題作りにも成功し、組合の活性化にもつながったようだ。

“緑化から緑花へ ミツバチが住む工場作り”プロジェクトの次なる目標は、純国産尼崎ブランドのハチミツを使用した菓子作り。来年採取予定のハチミツを使ってくれる洋菓子屋さんや和菓子屋さんを募集中だそうだ。今回はアマ~いお話でした。

尼崎鉄工団地協同組合 ホームページ


江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンなお社きふねさんの第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。ラジオ番組「8時だヨ!神さま仏さま」(FMあまがさき毎週火曜日夜8時~)も好評放送中。podcastも。