題名のない絵画展

学校、商店街、まちの会館…気づけばいつもそこには名画があった。有名画家のお宝から期待の新人の一枚まで、名もなき絵画展を味わおう。

『尼崎城』尼崎中央一番街

阪神尼崎駅の西、商店街の入口の迫力ある絵。「地元の画家である大西さんに依頼したんです。尼崎城は街のシンボルですから」と同商店街理事の上田泰廣さん。漫才コンビ「ちゃらんぽらん」で活躍し、現在は“太陽画家”として知られる大西幸仁氏が描いた江戸の尼崎。城を照らす太陽が眩しい。

『工場』県立尼崎高校玄関

県立尼崎高校の玄関に飾られた工場の風景。「小学生の時から遊び場は左門殿川で、そのあたりの風景が好きなんです」という作者の涌田詩織さんは同校の卒業生だ。在学中に“工場3部作”を完成。本作品は県大会で特選、全国高等学校総合文化祭に出品した力作だ。現在大学2年生、目指すは美術教師なんだとか。

『無題』竹谷小学校図書室

尼崎が生んだ世界的アクションペインター白髪一雄の母校・竹谷小。図書室には彼の1960年頃の作品『無題』がかかる。「校内の図工展にも足を運んで下さり、子どもたちの絵をやさしく講評していただきました」と思い出を振り返る濱口教頭。巨匠の人柄を思わせるエピソードだ。

『富士山』桜湯

銭湯の壁といえば、やはり富士山。大庄北にある創業60年の桜湯では、今もモザイクタイル画の富士が男湯の壁を堂々と飾る。「壁絵からタイル絵にして40年近くかなぁ」という2代目の乃生健次さん。女湯のタイル画のテーマは「湖に浮かぶ白鳥」と優雅。つい見とれて長湯してしまいそうだ。

『大尼崎鳥瞰図』尼崎市中小企業センター

2階の廊下に飾られた複製は、昭和8年に描かれた「空から見た尼崎」。工場や商店の名前も細かく記され思わず見入ってしまう。「年配の方は興味深く見ていかれますよ」と尼崎地域・産業活性化機構の佐野理恵さん。展示の端には本誌・香山が書いた解説文も発見。ごゆっくりご覧下さい。

『壁画』神崎川堤防

「堤防の落書き消しがきっかけです」と壁画誕生のエピソードを小田会の田中正三さんが教えてくれた。2003年から地域団体や企業、学校が協力しペインティングをはじめた。近くにある関西ペイントが塗料を提供。中国街道の宿場だった地域の歴史を「渡し船」「帆掛け舟」「灯篭」など8点の図案で伝える。

『或る状況』大庄公民館

「不思議な絵でしょ」と公民館の奥野眞一さんが案内する作品は、村野藤吾の名建築の階段にあった。鮮やかなブルーに引かれた曲線と無機質な平面構成が対照的。作者は岡本太郎に憧れ、50年以上抽象画を描いてきた宮崎五郎さん。実は元市役所職員だ。「館内が殺風景だから」と依頼され寄贈した一枚なのだ。