今さら聞けない素朴な疑問「公害」って何ですか?

どんな対策が取られてきたんですか?

公害反対運動の高まりに押され、尼崎市も規制へと乗り出しました。1969年に県と市は大気汚染防止協定(第1次公害防止協定)を市内62社と締結。硫黄分の少ない重油の使用や煙突への脱硫装置の設置などを企業へ促してきました。当初は「単なる紳士協定」という批判も受けながらも、企業への立ち入り検査を重ね、第5次まで協定は結ばれてきました。

73年には認定患者の救済事業がはじまりました。関電など公害発生源である企業から賦課金を徴収し基金を創設。翌74年には国も「公害健康被害補償法」を施行し、認定患者に対して生活補償や医療手当、死亡時見舞金などが給付されるようになりました。

現在も、市内12カ所の測定所と、移動測定車1台で大気汚染の状況を監視し続けています。しかし、未だ環境改善のすすまない国道43号沿道では、防音壁や大型ディーゼル車の過積載を取り締まる測定所が整備されるなど、新たな対策は今も続けられています。

県と住民の対話集会の様子
東本町に設置された測定値表示パネル
移動測定車「あおぞら号」

公害は終わったんですか?

尼崎公害訴訟は99年に企業と、2000年には国・道路公団と和解しました。工場煤煙については、発生を抑制する装置を企業が取り付けたことや環境アセスメントの定着もあり、一定の改善を見ました。しかし、車の排気ガス対策は、まだ緒に就いたばかり。和解時に合意したディーゼル車の通行量規制のために、ロードプライシング(阪神高速湾岸線を割引して車を誘導する施策)などを行っていますが、まだ明確な成果は得られていません。公害はまだ終わっていないのです。

交渉続く「連絡会」

原告と被告の国・道路公団が交わした和解条項の実現に向け、2001年から「尼崎市南部地域道路沿道環境改善に関する連絡会」が続いています。09年10月までに34回が開かれ、阪神高速5号湾岸線の通行料を値引きして国道43号線や3号神戸線から大型車を誘導する「環境ロードプライシング」の試行や、警察庁や関係行政機関等と連携した沿道環境対策、国道43号・東本町交差点のバリアフリー化などを協議しています。

国道43号線のバリアフリー化

国土交通省によるイメージ図

約50mという幅員から、国道43号は地域を分断する道路と言われています。横断者の負担を軽減し南北の往来を回復するため、東本町歩道橋にエレベーターや排気ガスを遮る壁を設置する計画が進んでいます。

尼崎公害年表「激動の90年」

1920 尼崎公害のはじまり(皮革工場の悪臭・汚水)
1934 日本電力火力発電所の煤煙被害の訴え
1935 兵庫県(以下、県)煤煙防止規制制定
1954 鈴木博士らによる全国初の大規模調査実施
尼崎市(以下、市)工場誘致条例公布
1955 市衛生局衛生課公害防止係設置
1960 市が全国初の大気汚染実験予報実施
1963 第2阪神国道(国道43号線)開通
1966 大気汚染全国測定所設置
1967 公害対策基本法公布
県公害防止条例施行
1968 大気汚染防止法公布
1969 市衛生局公害対策室設置
第1次公害防止協定締結
1970 全国初の光化学スモッグが東京都で発生
「尼崎から公害をなくす市民連絡会」結成
1971 「尼崎公害患者・家族の会」結成
市内公害病認定患者が1000人を突破
環境庁設置
1972 第2次公害防止協定締結
市内公害病認定患者が2000人を突破阪神高速道路の工事に反対して、座り込み開始(1979年8月まで・2556日間)
1973 市公害病認定患者の救済に関する条例公布
市公害監視センター大気汚染監視室オープン
市内公害病認定患者が3000人を突破
尼崎市民の環境をまもる条例公布
1974 公害患者の保養のため「尼崎市立健康の家」完成
関西電力尼崎第一発電所廃止
工場緑化協定締結(市内103社113工場)
公害健康被害補償法に基づく指定地域東部に拡大
市内3分の2が公害指定地域に
1975 市内公害病認定患者が4000人を突破
第3次公害防止協定締結
市内公害病認定患者が5000人を突破
1976 関西電力尼崎第二発電所廃止
国道43号線公害訴訟提訴
1981 阪神高速3号神戸線開通
1983 第4次公害防止協定締結
1988 改正公害健康被害補償法施行
市内の公害地域指定が全面解除(新規認定を打ち切り、累計患者数11208人)
尼崎公害訴訟提訴(国、公団、企業9社)
1989 国道43号線公害訴訟、大阪高裁が和解勧告
1995 国道43号線公害訴訟、最高裁判決、原告勝訴確定
1999 尼崎公害訴訟企業9社と和解解決
尼崎公害訴訟(道路)結審
尼崎ひと・まち・赤とんぼセンター開所
2000 尼崎公害訴訟、国・公団と和解成立
2001 尼崎市の環境をまもる条例施行
尼崎南部再生研究室開設
国道交通省、道路公団との第1回連絡会(継続中)
2003 市環境基本計画策定