農ある尼崎へようこそ

買う、味わう、育てる。尼崎で農業を感じる方法はさまざま。とれたての旬を味わう4つの方法をご紹介。

安心食材 百貨店を席巻

「安心できる地場野菜を買う」

お隣の西宮に昨秋誕生した巨大商業施設「阪急西宮ガーデンズ」。連日売り切れゴメンで百貨店の食品売り場を席巻しているのが「阪神こだわり野菜」のコーナーだ。出品するのは「阪神有機農業研究会」。尼崎とその周辺の生産者が、土壌からの有機農法を研究・実践している。

「野菜作りの基本は土作り。農薬や化学肥料に頼らず、米ぬかを発酵させたぼかし肥料を使ってます」という会長の遠藤晃久さん(46)は武庫町に10カ所の畑を持ち、毎朝軽トラを駆って収穫に走り回る。

一般的な野菜はもちろん、ズッキーニやルッコラ、モロヘイヤといった変わり種も。消費者に近い都市近郊農業ならではの多品種少量生産が強みだ。「安全・新鮮・種類も豊富」な野菜の三冠王。南部でも売ってくれません?

阪神有機農業研究会

残留農薬が国の基準の10分の1以下という「ひょうご安心ブランド」にも認定。JA兵庫六甲武庫支店で不定期に朝市も。

素材の旨みで勝負の「食堂」

「とれたて野菜の料理を味わう」

店名はイタリア語で、ずばり「野菜」の意。「近場で採れた旬の野菜を使い、いたってシンプルに、素材の旨みを引き出す」というマンマ(お母さん)料理のトラットリアを目指す田中孝治さん(37)の思いがこもっている。店のある富松町周辺の畑で日々分けてもらう野菜をどう活かすか。そこが腕の見せ所。

「僕はこの富松町で生まれ育ったんですけど、のどかで緑も多くて、イタリアの田舎に近い風景やなあと感じますね。あ、でも人のノリは南部もいいですよね。僕も今住んでいるのは南部ですし(笑)」

地場野菜が引き立つのは、その町を知り尽くした料理人だからこそ。伝統野菜の富松一寸豆を使ったスープやパスタ、デザートも好評だ。「尼のイタリア」で味わう真のスローフードなのである。

ベルドゥーラ

ある日のランチより「新ジャガイモの田舎風煮込ソーススパゲティ」と「ジャガイモのシフォンケーキ」。TEL:06-6427-3811 水休

緑のプロがアドバイス

「気軽に野菜を作ってみる」

家庭菜園ブームで、プランター栽培に適した野菜の種や苗が気軽に手に入るようになったが、「トマトの実がならない」「すぐにアブラムシがつく」とベランダファーマーの悩みは尽きない。そんな時、心強い相談所が阪神尼崎駅前にある。

「葉っぱに牛乳をスプレーしたらええんですよ」とやさしく答えてくれるのは相談員の藤野守弘さん(72)。長年、農業試験研究所に勤務し、園芸学校や大学で講師も務めた園芸のプロだ。

「小さくても自分で作った野菜を食べるのは格別。最近は若い女性や学生さんも相談にみえますよ」。土の選び方からおすすめの参考書の紹介まで、懇切丁寧なアドバイスはなんと無料。ビギナーには頼りになる“駆け込み寺”なのだ。

中央公園 緑の相談所

上坂部西公園の相談所では、第4月曜日に農家による指導も。10:00~16:00水木祝休 TEL:06-6411-8739 電話相談も可

やっぱり欲しい自分の畑

「本格的に農業をはじめる」

本格的に野菜を作るなら、市民農園がいい。尼崎市は農家から提供された遊休農地の貸出を毎年募集している。現在11カ所あるがいずれも人気で、中には抽選倍率が20倍を超える激戦地も。

「『何回応募しても全然当たらん』というお電話もよくいただくんですが…」と市農政課の金子智子さんも盛況を実感している。

そんななか、西立花町に住む藤田薫さん(65)は栗山町にある市民農園に今年めでたく当選した。「スポーツやってたんやけど腰を悪くして」と、今は野菜づくりが生きがいに。自宅で種から苗を育てては農園に植え付ける。キュウリやトマト、ナスなど、15m2の区画に10種類を超える野菜が実る。「家族や近所の人からの期待が嬉しくて」と、農園に足繁く通う毎日だ。

市民農園

募集の案内は毎年2月号の市報で告知される。1区画15m2が年間1万5千円の使用料で借りることができる。