神主のぶらり街歩き 連載第2回 商店街編 店先の初物が気になる
健康のため、ウォーキングを始めた。でもただ歩くだけでは面白くない。そこで、神主の目でまちを観察することにした。
暑い夏が過ぎた。夏祭りでかなり痩せたが、その後リバウンド。しかもあまりの暑さにウォーキングもさぼりがちになってしまった。「これではいかん」、ということで街歩きを再開した。
毎日単調な景色では飽きてしまう。そんなとき、商店街を歩くことにする。商店街を歩くときの弱点はお店のご主人などたくさんの知り合いに会ってしまうこと。歩くより挨拶している時間の方が長いこともしばしばだ。しかも今、何の為に歩いているかを説明しなければならないことも…。話疲れて帰ってくることすらある。
それでは商店街を歩く利点は…、というと、八百屋さんや果物屋さんの店先に季節の品が並んでいるのを見かけることだ。なぜなら神社では神様に対し、季節の物をお供えするからで、できるだけ早く購入したい。「神さん、初物ですよ」とお供えし、いつも以上に喜んでいただくことができるからだ。この季節なら、梨や栗、松茸など。参拝者の中には、そのお供えを見て「秋ですね」と改めて季節を実感なさる方もおられるほどだ。
そんな商店街の店の入れ替わりが激しい。チェーン店が増えたような気もする。また一部ではシャッター通りになってしまっている所もある。店の前を通り過ぎるだけで「こんにちは」と挨拶していた店も少なくなってしまった。ある意味、“尼崎らしさ”が色濃く残っていた場所だけあって、何とか昔の姿のままで、と願うばかりである。
兵庫の丹波地域では、街ぐるみで学校から帰ってくる子どもに対し「お帰り!」と声を掛けるそうだ。もちろん子ども達は「ただ今!」と大きな声で答える。出屋敷・三和・中央商店街がそんな通りになれば素敵だなと思いつつ、「宮司さん、痩せたね!」と声を掛けられることを夢見て今日も歩く。
江田 政亮 えだ まさすけ
だんじり祭り、地域寄席…いつでも尼崎人にオープンな南部のお社きふねさん(貴布禰神社)第17代宮司。「国道43号線にだんじりを走らせたい」と南部再生への想いは日々強まる。