フード風土 2軒目 居酒屋レスト 琉球國

食の好みが人を表すことがある。街も同じ。よそ行きの「グルメ」じゃない、生活密着の「食いもん」を探して、アマを歩く。

産地直送!恍惚の豚足

世に沖縄好きは多い。彼らの語るところ、その魅力は海と空と風だったり、音楽や人間だったり、多事多難な歴史の中で育まれてきた民俗文化であったりするのだが、もう一つ、声を大にして言っておきたいことがある。

食いもんが美味い。これである。

ウチナー料理は尼崎でも気軽に味わえる。何しろ、大阪の大正区に次ぐ沖縄出身者の集住地域。県人会によれば、兵庫県内1500の会員世帯のうち、8割近くは尼崎在住なのだという。

「琉球國」はそんな土地柄に根差した沖縄大衆居酒屋。店主の伊礼哲さんは伊是名島出身の49歳、陽気な民謡歌手のおっちゃんだ。週末には三線(さんしん)を抱えて店内の舞台にデンと立っている。

カラオケはやっぱり沖縄の歌を
(左上)ソーキそば 700円(右上)テビチ 600円(下)ゴーヤーチャンプルー 650円

伊礼さんに勧められ、まず箸を付けたのはゴーヤー・チャンプルー。これがないと始まらない、毎日食べても飽きませんという定番中の定番である。

鮮やかな緑色の肌、そしてイボ。ゴーヤーのスライスを、卵やポーク(豚の缶詰)と一緒にグワシッとつかみ口に放り込む。と、舌の上に広がる程良い苦味と出汁の旨み。立て続けに3口ほどかき込んだ後、ビールを喉に流し込む。ぷはー。これはやめられない。

チャンプルーは、野菜や豆腐や豚肉を雑多に炒め合わせた家庭料理の王様。「アメリカ、東南アジア、日本。いろんな文化を吸収して融合した沖縄文化そのものなんだね」。そう言って、伊礼さんは次々とチャンプルーを繰り出してくる。

「ナーベラー」。ヘチマだ。出汁の染みた柔らかな食感はウリの青臭さからは想像もできない。「パーパヤー」。熟す前のパパイヤを細く切り、野菜炒め風にしたもの。シンプルだが、思わず「おう」とひざを打つ美味さだ。

そして、極めつけの一皿はテビチ(豚足)。大根や昆布と一緒に、おでん風に煮てある。口に含んだ瞬間トロリと溶け出す、あまりにも濃厚な旨みに恥ずかしながら一瞬我を忘れた。恍惚となった。

武骨にして奥深い産地直送の味。アマには、ウチナーの風が確かに吹いている。■松本創

居酒屋レスト 琉球國

尼崎市昭和南通6-160 06(6418)8041